豊橋の「旅籠屋 三ツ田屋」
豊橋市二川町の「旅籠屋 三ツ田屋」で、レンガ造りの蔵「黒煉瓦蔵」の建築110年を記念したイベントが開かれた。一般社団法人二川リンケージ主催。蔵を使ったコンサートのほか、三ツ田屋を舞台とした古民家再生計画の発表、地元音楽グループのオカリナ演奏もあった。
三ツ田屋の奥にある黒煉瓦蔵ができたのは1912(大正元)年。製糸業を営んでいたとされる田中万次郎家の土蔵で、一つの蔵を仕切り、片側にはまゆを、もう一方に年貢米を保管していた。
「イギリス積み」と呼ばれる手法で構築。外側の焼過レンガは釉(ゆう)が施され、ひさしの支えにも意匠を凝らしている。職人のものづくりへの情熱がうかがえる「粋」な造りだ。
2階の柱にある棟札には、棟上げ日とみられる「大正元年十月十八日」の文字と、田中万次郎家族の名がある。
イベントは、二胡奏者Nancy+(なんしぃ)さん、ギタリストのまつはしたかしさんによるユニット「mon*ton」の演奏で幕を開けた。
蔵に集まった人を前に「となりのトトロ」の「風のとおり道」を演奏。母屋へ会場を移し「魔女の宅急便」の楽曲などを熱演した。最後の曲を弾き終わると、会場は大きな拍手につつまれた。アンコールでは「秋桜」を奏でた。
演奏を終えたNancy+さんは蔵について「反響で奏者も観客も生の音が楽しめる。防音もしっかりしており音を出しやすい。駒屋は展示会場としてよく利用されている。三ツ田屋は演奏の場として、まちなかのミニコンサートホールのように活用できると面白そう」と語った。
休憩後、主催の二川リンケージが「三ツ田屋再生計画」を発表した。母屋を開放してコミュニケーションの場として人を呼び込み、地域活性化の中心にするという。
将来像について、二川リンケージの尾崎雅輝さんは「次の110年に向け、みんなで楽しく、刺激を与え合いながら、コミュニケーションや創造を楽しんでもらいたい。二川町で暮らし、製糸業に変革をもたらした小渕志ちのようなイノベーターが育つ場になれば」と述べた。
三ツ田屋が生まれ変わるのは来年4月末。クラウドファンディングで、修繕費用などを募る計画もある。
【夏目敬介】
蔵で演奏するNancy+さん(奥右)と、まつはしさん
母屋での演奏