2019年度に創設され、東北6県から愛知大学地域政策学部に入学することを条件に4年間で300万円が支給される「本間喜一奨学金」の第1号に選ばれた鈴木拓優さん(22)が今月、卒業する。就職先は奨学金の事務局がある山形県川西町役場で、「愛大で学んだことを川西町で役立てたい」と張り切っている。
奨学金は卒業生で本間喜一顕彰会名誉会長の越知專さん(92)=豊橋市小松町=が、川西町に5000万円を寄付して創設した。愛大創設者の本間氏の出生地で、東北から1人でも多くの学生が来てほしいとの願いを込めた。
鈴木さんは同町に隣接する長井市出身。長井高校から愛大に進学した。「奨学金のおかげで金銭の心配をせずに勉学に励むことができた」と感謝する。4年間を「多くが新型コロナウイルス禍でしたが、他世代と違う大学生活をプラスに考えて過ごした。地理情報システム(GIS)を活用した地域づくりなどが学べてよかった」と振り返る。
豊橋の印象は「山形と違い、雪で苦労することがなかった。とても住みやすいと感じた。都会とも近く、充実した学生生活を送ることができた」と話す。
就職は悩んだ。愛知に拠点のある企業から内定をもらったが、「奨学金を受けたことを考え、山形に戻ることを決めた。町長からは本当にいいのかと聞かれました」と語る。
「東北から愛知へ来て、また東北に戻る人材はほとんどいない。この経験と大学で学んだことを生かして、川西町や山形の発展に尽力したい」と意気込む。
越知さんは「本間さんも天国で喜んでいると思います。川西町で頑張って」とエールを送った。
奨学金はこれまで4人が利用している。鈴木さんは24日の卒業式に出て、古里へ帰る。
【竹下貴信】