VIO脱毛という言葉を耳にした人はどれぐらいいるだろうか。下半身の下着で覆われる部分を指し、そこの脱毛を意味する。これまでは性別を問わず、美容目的の若い世代の利用が大半を占めていた。ところが近年になって、自分が将来、介護を受けることを見越した中年層の「介護脱毛」が急増しているためだ。
豊橋市の上田奈緒美(50)さんは、市内の会員制エステサロン「レナトスシュシュ」に4年前から通っている。顔などの美容への関心からだったが、美容だけではなく介護を受ける側としてVIO脱毛をしている。「高齢化がこれだけ進み、自分が年老いても老人施設に入れる保証はないという不安がある。家族や介護してもらう人への負担を減らしたいと思って」と話す。
このエステサロンオーナーの杉浦真紀さんは、現役世代が親の介護を経験したり、介護現場の話を聞いたりして、事前に準備をし始めるケースが増えていると言う。「介護で下半身を他人に触られるのは、たとえ家族であっても嫌だと多くの人が考えます。さらにVIOと呼ばれる部位に毛があると、排泄物が残ってしまったり、臭いの原因にもなったりする。介護者の負担軽減に加えて、自分の尊厳を維持するためにVIO脱毛をするお客さまが多いようです」と話す。
医師の視点から、そのメリットを指摘するのは豊橋市の美容皮膚科「遠山クリニック」の遠山昭子医師。「VIO脱毛の相談がここ5年でかなり増えています。確かにこの部分を脱毛しておくと、清潔に保つことがより容易になる。感染症リスクなどを低く抑えられる可能性が高い」と指摘する。
世界でも前例のない速度で進む少子高齢化。将来不安を背景に、周囲の介護をしてくれる人への負担の軽減、そして自身の尊厳、人生の質の向上のため、VIO脱毛の希望者が増えているのだ。
(本紙客員編集委員・関健一郎)
上田さんの相談に乗るオーナーの杉浦さん㊧は看護師でもある
医学の視点からもVIO脱毛の利点は多いと指摘する遠山医師