10日投開票された豊橋市長選は、豊橋公園で多目的屋内施設(新アリーナ)を核とする事業計画を巡り、契約解除を訴える長坂尚登氏(41)が推進を唱える現職と新人を抑え初当選した。長坂氏は当選後、報道陣の取材に契約解除はすみやかに進めると繰り返す。一方で建設賛成の有権者を中心に、SNSも含め反対の機運が日増しに高まっている。
新アリーナ建設予定地の豊橋球場では解体工事に伴う発掘調査が進んでいた。多目的屋内施設整備推進室によると、当初は11日からの着工へ向けて工事用仮囲いの設置準備が進んでいた。その翌週から本格的な解体工事と周辺の一部樹木の伐採を始める計画だった。
球場内のグラウンド部分では市文化財センターによる地下の発掘調査が続いていたが、同じく作業は中断された。観客席など解体部分の発掘開始も目前に迫っていた。
長坂氏は10日夜の当選決定時と、11日の当選証書付与式後の報道陣からの質問に、新アリーナ計画について「就任したらすみやかに契約解除の通知を指示する」と考えに変わりないことを改めて強調した。
さらに現状では球場施設の解体まで着手していないことから、豊橋球場存続への考えも示した。 新アリーナを巡っては建設地の豊橋球場を解体した上で、東田や石巻など市営球場を市総合スポーツ公園(神野新田町)に集約する形で新築することにしていた。豊橋球場解体の根拠として、市は観客席のコンクリートひび割れや場内施設の老朽化のほか、ナイター照明による「光害」への対策を挙げていた。球場付近の道路では車の運転中に「まぶしくて視界不良になる」などの苦情もあり、こうした課題解消策として新球場整備が進んだ経緯もある。
豊橋球場を温存すればこの問題とも再度向き合うことになる。
契約解除に伴う違約金について長坂氏は金額が膨らまないよう、すみやかな対応で負担を減らす考えを示している。一方で、運営事業がなくなることで生じる逸失利益も市の負担となる。関係者によると「運営事業の利益は数千万~1億円と見ている。単純に事業期間30年分なら数十億円に上る」という。整備運営を担う「豊橋ネクストパーク」に加わった建設事業者などが見込んだ利益も上積みとなる。さらに設計業務を含む事業計画作成や先行する関連工事に要した実費、今後の建設工事に必要な人員や資材の確保など建設費や一般管理費も含む費用も積み重なる。
アリーナ完成を願う市民からは「違約金事態は何も生まないお金だ。すべて市民の税金で賄われる。計画中止のために数十億円をどぶに捨てるようなことを市民が納得するのか」と指摘の声が挙がっている。
さらに計画推進に同調した市議会の抵抗も予想される。市議会では計画推進派が大多数だ。「もう一つの民意」を持つ市議会への説明にも注目が集まる。
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候補者同士の明確な政策論争もなく、論点がかみ合わないまま「アリーナ問題」も争点の一つに浮上した豊橋市長選。当選した長坂氏は契約解除を強く打ち出した。少数与党で難しい議会対策が予想される中、宙に浮いた状態で新アリーナ中止がどんな影響を及ぼすかをまとめた。
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