スナック・ナズー舞台に「ダブルママ」の魅力満載
豊橋市在住の映画プロデューサー谷口由里子さんらが手掛ける「映画ができるまで、」プロジェクトは、第2弾の短編映画「あの灯(ひ)に帰ろう」の上映会を「市こども未来館ここにこ」で24日に開く。舞台の中心は同市松葉町1のスナック「NaZoo(ナズー)」。常連を引き寄せる懐かしい雰囲気、二枚看板の店主の魅力が作品と連動している。
作品は、亡き母が残した飲食店と姉妹を中心に展開する。主人公の奈海は店を1人で切り盛りしつつ、若年性認知症の姉の渚の介助に追われる毎日。有名写真家となった旧友との再会を機に、全てを捨て街を出ようかと揺れる心境を描いた。
奈海役はプロジェクトを一緒に手掛ける俳優の蔭山ひろみさん。渚役には久保田メイさんを起用し、谷口さんも俳優として出演する。豊橋市出身の中川寛崇さんが監督を務めた。
舞台となるナズーは2年前に豊橋へ移住したての頃、支援者で常連客の一人に紹介された。鈴木まみ子さんと伊奈明子さんの「ダブルママ」が12年前から営んでいる。
店内は主人公の現在と幼少期のシーンで登場する。幼少期の主人公を演じる子役のオーディションも行った。店でのロケでは鈴木さんと伊奈さんも初出演。自然な演技に監督から「芝居経験があるんですか」と尋ねられた。店へのメディア取材も多く、客商売の経験もあって緊張はなかったという。
姉妹の母を演じた鈴木さんは「大勢のスタッフや出演者らが動き回る映画の舞台裏を見せてもらった。地元の子役とも関われていい経験」と喜んだ。伊奈さんも「撮影の拘束は長く、シーンを撮るたび食器を洗い直した。初めて舞台裏を体感した」と振り返る。
谷口さんによると今回の作品に、新型コロナウイルス禍で元気をなくした飲食店へのエールも込めたという。
ナズーも、コロナ禍で時短営業などの影響を受けた。そんな店を支えたのも帰ってきた常連客だった。
「店内はいろんな人が交わり、懐かしさや安心感が漂う。自宅のような場所」と谷口さん。
2人のママは「一部とは疎遠になったが、忘れず戻ってくれた常連客のおかげで今がある。映画を見た人がなじみの店を思い出し、まちに活気が戻るきっかけになってほしい」と期待する。
谷口さんは「多くの縁に恵まれて映画が完成した。恩返しに、コロナ後のまちの飲食店を盛り上げたい」と意気込む。
上映は午後2時と午後6時の2回。小学生以下500円、中学生以上1500円(税込み)。応募は専用フォーム=QRコード=から。
【加藤広宣】