ベルギーからの栄誉に「光栄の極み」
ベルギーの大手化学メーカー「ソルベイグループ」の「ソルベイジャパン」(東京都)で顧問を務める田原市出身の井本万正さんが、同国のレオポルド勲章オフィシエ章を授与された。20日、東京都のベルギー王国大使館で授章式があった。
県立成章高校から明治学院大学法学部に進んだ。フランス化学メーカーの日本法人「ローヌ・プーラン・ジャパン」や繊維・素材メーカー「東洋紡」勤務を経て、2011年にソルベイグループの「阿南化成」(現ソルベイ・スペシャルケム・ジャパン)に入社。18年にソルベイジャパン社長に就任。
21年にはベルギーの外務貿易大臣経済外交アドバイザーに。23年から現職。今年はソルベイ・スペシャルケム・ジャパンのコンサルタントや、在日ベルギー・ルクセンブルグ商工会議所の副会頭を務める。
レオポルド勲章オフィシエ章は、長年にわたり経済関係の発展のために尽力し、功績が認められた人に贈られる。井本さんはベルギーを代表する企業の日本法人社長として、両国の関係発展に寄与したことが評価された。
「いかにベルギーに日本を売り込むか、いかに日本にベルギーを売り込むか。そこに腐心してきた」と語る井本さん。意外なことに、学生時代に一番苦手なのは化学で、次が英語だったという。ローヌ・プーラン時代にフランス人上司の下で働き、実務を通して実用的な知識を身に付けていった。
ベルギーについて「大国に囲まれており、公用語は国境を接するフランス、オランダ、ドイツ語が使われている。それだけに調和を取ることに長けている」と話す。
ソルベイグループの日本代表としては、日本市場の特殊さに頭を悩ませたという。「技術レベルが高い割に、値段が安い。国際社会のスタンダードに当てはまらないことが多く、参入が難しい。双方の調整をして合意を取り付けることが大変だった」と苦労を語った。
その原動力は職務への使命感や、自分が知らないことに挑戦していく好奇心のほか、ソルベイ創業者であるエルネスト・ソルベイ(1838~1922年)とその一族へのリスペクトがあったという。
エルネストはソルベイ法と呼ばれる炭酸ナトリウム製造法の発明者で、現代の化学工業の礎になっている。アインシュタインをはじめ著名な物理学者が出席し物理学の発展に大きく貢献しているソルベイ会議の主宰者でもあった。
社会支える化学の力
「化学は現代社会を支える。公害やマイクロプラスチックなどの負の部分もあるが、それらを解決するのもまた化学の力。さまざまな技術、産業をこれからも支えていく」とその大切さを語った。
受章について「光栄の極み。大したことはしていないが、日本とベルギーをつなぐために行動してきたことが評価されたのはうれしい。これからも及ばずながら関係発展のために微力を尽くしていきたい」と語る。「来年の大阪・関西万博でも、ベルギーを知ってもらえるように頑張りたい」とPRした。
若者に向けて「世界に視野を向けて飛び出してほしい。国際的に日本が活躍する場面は多くある。日本人として胸を張って活躍してほしい」とエールを送った。
【岸侑輝】