【インタビュー】「負けヒロインが多すぎる!」北村翔太郎監督、「豊橋の空気感、忠実に再現」

2024/07/18 00:00(公開)
北村監督

 豊橋市が舞台の人気ライトノベル「負けヒロインが多すぎる!(マケイン)」のテレビアニメがら中京テレビなどで放送中だ。北村翔太郎監督や神宮司学プロデューサーに作品に対する思いやこだわりなどを聞いた。

 

欲しいものが手に入らなかったという経験は面白くなるポイント


 ―マケインを初めて知った経緯を教えてください。
 ◆約2年前にアニメ化の話があり、「A―1 Pictures」の関係者から「監督をやってみないか」とお話をいただきました。原作を読み、第一印象は女の子がたくさん登場して、ワイワイ楽しい作品だと感じました。そして、読み進めていくとキャラクターたちの振られた後の感情がとても丁寧に書かれていたり、舞台となる豊橋の情景との絡みも面白く、そういう要素をうまく組み合わせたら他にはないアニメ作品になると思いましたね。それから「やります」とすぐに手を挙げました。


 ―面白いと思ったポイントを詳しく教えてください。
 ◆アニメやライトノベルらしい華やかさもありながら、負けヒロインが振られた後にどう向き合うかに注目しました。好きな子と結ばれなかった、欲しいものが手に入らなかったという経験は、アニメを普段見ていない人でも共感できる、面白くなるポイントだと感じました。

 

 ―苦労したことは。

 ◆原作自体にファンがいる作品なので、ライトノベルを普段読まない層に裾野を広げるにあたり、バランスが難しかったです。アニメでキャラクターの心情や青春らしい要素を足していこうと思っても、原作を読んでいる方々が好きなポイントと外れていってしまう可能性があるので、そのバランスには気を遣いましたね。どちらかを切り捨てるとか、寄り添うとかではなく、どちらにも共感してもらう作品にするのが重要。大変だけど、やりがいがありました。 

教室の景色に注目 Ⓒ雨森たきび/小学館/マケイン応援委員会

豊橋へのロケは10回以上

 

 ―原作サイドとの連携は。

 ◆原作者の雨森たきび先生とは何かあるたびにコミュニケーションを取らせていただきながら進めました。シナリオをつくる段階では、週に1回打ち合わせするほど。新しく提案をすることもあったのですが、雨森先生はそれを受け入れてくださったり、別の意見をいただいたりすることもありました。

 

 ―豊橋について教えてください。

 ◆雨森先生にとって豊橋がとても大切な場所なのだと感じました。だからこそ、この舞台をどう見せるかには相当時間をかけました。他の作品のロケハンは1~2回が多いですが、豊橋へのロケには10回以上行っています。春夏秋冬それぞれの景色に合わせて色を変えたり、実際に感じた空気感を再現したりすることを心がけています。

 

 ―豊橋の表現にこだわる理由は何ですか。

 ◆キャラクターに共感してもらうことを目指したときに、学校の教室など場所の存在感を忠実に再現する必要があります。ただ、写真で見るのと人の記憶にあるものは結構違います。学校にも何回も行かせてもらって、写真はたくさん撮りましたが、「今の高校生にはどう見えるのだろう」と想像しながら、脚色して今の映像になっています。例えば、「夏の教室ってどう見えているのかな」と。写真で見ると映像ほど緑ではないです。周りに木があって、日差しがすごく強くて、セミが鳴いていて、そんな気分になってもらいたいと作りました。

教室シーン Ⓒ雨森たきび/小学館/マケイン応援委員会
時習館高校でのロケ(とよはしフィルムコミッション!提供)

こんなに魂を燃やして仕事することあるかと言えるくらい熱い現場

 

 ―声優さんを選ぶ基準は。

 ◆作品性に合うか、声が聞きやすいかなどを基準に選びました。オーデイションは1キャラあたり100名に迫るほどの応募がありました。雨森先生や音響チーム、我々で何度も議論を重ねました。パッと聞いて声質が合わないとなったらお客さんの期待に応えられなくなります。声質は合うけど、このシーンの芝居には合わない人や、反対にこのシーンの芝居は良いけど、声質が渋すぎるとか。キャラクター同士のバランスも考えながら時間をかけて決めていきました。

 

 ―SNSでトレンド入りするなどとても話題になっています。ファンの声はどう感じますか。

 ◆とてもうれしいです。我々も色々な人と話し合って作ってきたので、実際にどういう反応をされるのか分からなくて不安でしたが、ファンの方の声を聞けると現場も盛り上がります。

 

 ―北村監督にとってこの作品はどんな作品ですか。

 ◆こんなに魂を燃やして仕事することあるかと言えるくらい熱い現場で、自分の人生にとって大きな作品になると思います。世の中にはいろいろな考え方があって、豊橋でもいろいろな出会いがあって、日々学ぶことだらけです。

 

 ―注目ポイントを教えてください。

 ◆原作を知っている人も、知らない人も、「こう来たか」と期待を越えるものをたくさん用意しています。楽しんでくれたらうれしいです。原作やグッズを本棚に飾ってもらえるような作品になるように頑張ります。

 

 ―ありがとうございました!

 

 中京テレビでは毎週土曜午前1時25分から、ABEMA、U-NEXTなどの動画配信サービスでは毎週土曜午前0時30分から放送。時習館高校のシーンが出てくる予告動画は公式YouTube=QRコード=から。

メインビジュアル Ⓒ雨森たきび/小学館/マケイン応援委員会

■北村翔太郎(きたむら・しょうたろう)/アニメーション監督・演出家。

1988年生まれ 新潟県秋葉区(旧新津市)出身

近年の代表作は『ヴァンガード』シリーズ(演出)、『かぐや様は告らせたい』シリーズ(演出)など。

 

アニプレックスの神宮司学プロデューサーの話

 

 もともとこの作品の原作のイラストを描いているいみぎさんとは、別のアニメ作品でもご一緒したことがあります。そのいみぎさんがイラストを手掛けるノベルということで、どんな作品なのだろうと思って原作を読んだのが最初でした。本作もいみぎさんが描くキャラクターがすごくかわいく、内容としても雨森さんが書くキャラクターたちはとても生き生きとしており、会話のテンポ感が気持ちよく展開していました。このキャラクターたちが動いているところを見てみたいな、と思ったのがアニメ化のきっかけです。

 

 豊橋という具体的なロケーションがあったこともアニメ化を後押ししました。過去にも、日本に実在する場所を舞台にしたことで、町ぐるみでいろいろ面白いことができました。本作でも豊橋と一緒に面白いことができそうだなと感じています。

 

■神宮司 学

(株)アニプレックス第二プロデュースグループ制作 1 課所属。プロデューサー。

過去手掛けた作品は「リコリス・リコイル」「ハイスクール・フリート」「冴えない彼女の育てかた」など。

 

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北川壱暉

 1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。

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