昨年の豊橋市長選で長坂尚登市長陣営が配布した法定ビラを巡り、市議会は説明不足などを理由に市長の問責決議案を可決した。市の調査でビラに引用した前市長の「パワハラ疑惑」の事実は確認できなかった。一方、市長は匿名の情報提供を理由に第三者での再調査を発表。質疑では、再調査の詳細は「個人の特定」を理由に答弁を避ける一方、ビラで個人特定につながる情報を広めた矛盾点など、倫理観や道義的な責任も追及された。
市長選の法定ビラを発端とした前市長のパワハラ疑惑に関する調査委員会は、新幹線車内や改札口付近での職員に対する言動などを調査した。こうした言動が原因で秘書2人が体調不良になったかも調べた。
記名式アンケートやヒアリングの結果、評価対象外の1人を除き対象全員が「なし」と回答。調査委は4日、いずれの事案も「パワハラの事実は確認できなかった」と公表した。
一方、長坂市長は7日夜、緊急記者会見を開いて「文字情報による匿名の情報提供があった」と発表。自らが設置に関わった市の調査委員会に対し「調査が十分ではなかった。情報提供者への配慮が足りない」などを理由に第三者で再調査する考えを示した。
会見では6日夜に「文字情報」で市長のもとへ匿名通報があったことを明かした。同一人物かは定かでないとしつつ、市議時代に聞いた情報と一致する点などから情報の信ぴょう性や確度の高さなどを主張した。
市議会の緊急質問は市の調査結果公表を受けた5日に続き、12日の本会議では7日の市長記者会見で明らかになった第三者調査も含めた質疑があった。
市長選のビラを制作し配布する際、事実確認の有無に関心が集まった。一連の質疑で長坂市長は、引用記事は確認できた「一定事実」で掲載判断した経緯が明らかになった。
坂柳泰光氏(自民)は、匿名の情報提供者と第三者による再調査について、市長が「情報源の秘匿」を重視して市幹部とで情報共有していない状況について指摘した。
杉浦康夫副市長は「できうれば市長のいう通報者の保護と、情報共有や調査対応を両立できないかと思う。法定ビラについては責任を持って説明すべき事案だ」とした。
古池もも氏(とよはしみんなの議会)は、匿名通報について、情報提供者を保護しながらの調査は可能であり、過去に法定ビラの記載事実の通報がなかった点を確認。そのうえで、長坂市長が引用記事にある職員2人に事前の聴き取りをしていないことも判明した。
ビラには病歴など特定され得る病名も記載された。当事者へ掲載の意思確認や掲載内容が適切だったかを問われ、長坂市長は「当時はそこに思い至らなかった」などと答えた。
今回の第三者調査では匿名通報者の保護を理由に本人以外の誰とも情報共有しない一方で、ビラには病歴といった個人の特定につながり得る情報を掲載するなど、矛盾した言動を指摘された。
古池氏は「仮に記載内容が事実であっても、明確なセカンドハラスメントに当たる。配慮に欠けるでは済まされない。市長としての責任を取らないといけない」と厳しい言葉で批難した。
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愛知県田原市出身。高校卒業後、大学と社会人(専門紙)時代の10年間を東京都内で過ごす。2001年入社後は経済を振り出しに田原市、豊川市を担当。20年に6年ぶりの職場復帰後、豊橋市政や経済を中心に分野関係なく取材。22年から三遠ネオフェニックスも担当する。静かな図書館や喫茶店(カフェ)で過ごすことを好むが、店内で仕事をして雰囲気をぶち壊して心を痛めることもしばしば。
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