豊橋市南栄町の人々らでつくる「南栄町協議会」が発足して1年。発足後から集めてきた街の人流データを、地域の店のにぎわいに役立てようとする計画が進んでいる。その名はIT先進国「エストニア」になぞらえ、「南栄エストニア計画」とした。白井紀充さん(47)は「市や鉄道会社などにもデータを共有し、暮らしやすい街づくりにつなげ、出店のメリットの一つにしたい」と話している。
1年前、白井さんが「南栄で人流データを店のマーケティングや来客の予測に活用できたら面白そう」と発案した。三重県伊勢市の老舗食堂が商店街の通行客数を来店数や発注数、サービス改善などに役立てているという情報を参考にした。
エストニアは人口137万人の北欧の国で九州より少し広い程度だが、行政サービスを100%オンライン化し、IT企業が次々と生まれるIT立国として知られている。「周りの人に興味持ってもらいやすい」と名付けた。
人流を調査するにはカメラとシステムが必要だ。だが「生成AIが発達し、コードの知識さえあれば、日曜テックでシステムをつくれるようになった」と白井さん。生成AIを使い、外の映像から歩行者と自動車と自転車を判別したうえでその移動方向が分かるシステムをつくった。店内の映像からは客の行動、過去に来店したかがどうかが分かる。
昨秋から店の入り口にカメラを設置すると、愛知大学や時習館高校に囲まれていることもあり、自転車利用者が多いと判明。自転車置き場の見直しや拡充などを計画中だ。
白井さんは、なぜ街のために行動するのだろうか。「今まで街に関心が薄く、いつの間にか暮らしにくくなってきたのが理由」と明かす。協議会ができたのも、近所の牛肉チェーン店「吉野家」が閉まったのがきっかけ。ほぼ毎日通うほど「吉野家通」だった白井さんは、「南栄終了感ある」とSNSでつぶやいた。
これに反応したのが呉服店「山正山﨑」店主の山﨑嘉大さん(43)と、町内に不動産を持つ桜田純一さん(58)だ。白井さんはメンバーを「バンド」にたとえ「それぞれ専門性や個性を持ち、同じゴールを目指しながらも異なるスタイルで活動するのが良い」と言う。「デジタルは一つの手段。将来的には『店を閉めようかな』などと気軽に相談できる距離感を形成し、街の異変を察知する役割を担いたい」と語った。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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