蒲郡市一色町のオーダー家具工房「木工時不知(もっこうときしらず)」代表の倉澤真さん(49)は、国画会が主催する日本最大級の公募展「第99回国展」(国立新美術館、4月30日~12日)に海の美しさを表現した椅子「水際(みずぎわ)」を初出品し、工芸部奨励賞を受賞した。20~25日に名古屋市東区の県美術館で開かれる国展の巡回展に作品を展示する。
倉澤さんは元自動車製造関連のシステムエンジニア。技術や知識を積み上げていく家具職人に興味を持ち、2000年頃に転身した。出身地の岡崎市や豊橋市で修業を積み、18年に永遠の価値があるものづくりを願って「木工時不知」を開業した。
工房を開いて5年を迎えた23年から、地域の人に親切にしてもらったことへの恩返しと地域貢献を目的に、形原地区の繊維ロープを再活用して作ったアップサイクル椅子「カタハラスツール」を昨年製作。市内の宿泊施設などに無償提供してきた。
また、海を身近に感じてもらいたいとの思いで、漂着ごみから生まれる海洋プラスチックを素材にした創作家具作品を制作。同市海陽町の「渚の交番」に展示し、作品を通して増え続けるプラスチックごみと環境問題を分かりやすく紹介してきた。
昨年9月、倉澤さんが新しいチャレンジとして作家として活動を始める中で、漂着ごみや海洋プラスチックの現状を知ろうと、沖縄県石垣市の白保海岸を訪れた。青く透き通った遠浅の海や海岸の風景を見た際、海岸に似合う家具として「水際」を思い付いた。
蒲郡市の工房に戻り、今まで作った椅子を参考にしながら制作した。水際は高さ43㌢、幅35㌢。座面はクリの木材を、脚には海の美しさを表現するために透明樹脂を使用した。
樹脂は加工しやすい机の表面の模様として活用されるが、「水際」では平らな座面ではなく、加工が難しい立体の脚部分に使われている。また、木材と組み合わせて強度を高めたほか、樹脂の透明度と木材の滑らかさを表現するため、紙やすりを使い分けた。
作品を通して沖縄の海の美しさや海を守り続けることへの重要性、環境問題を全国の人に伝えたいと思い、挑戦のつもりで応募した。結果、脚の部分などが評価され、将来性のある優れた作品として奨励賞受賞につながった。
倉澤さんは「今までいけなかったところも勇気を持っていける自信につながりました。受賞したから終わりではなく、より大きな目標を目指していきたい」と話した。
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愛知県蒲郡市生まれ。2020年、地元蒲郡が好きで東愛知新聞社に入社。同年から蒲郡担当、市政や地域行事、文化など全般を取材。ドローンを使って東三河の名所を空撮したルポ「大二朗記者の空からの訪問」を不定期連載。これまで、三河大島や三河国分尼寺跡、日出の石門などを空撮してきた。ドローン技術向上のため、国家資格「一等無人航空機操縦士」を24年に取得。読者の皆さんが楽しんでもらえる記事と記憶に残る写真を掲載できるよう、日々、頑張っていきます。
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