【連載】祈りの火を絶やさぬために㊤ 豊橋まつりと市長の責務

2025/06/22 00:00(公開)
市民的行事として定着した「豊橋まつり」(市民総おどり)

 長坂市長は「豊橋まつり振興会」の会長職を辞め、名誉会長として直接運営に関わらない方針を示しました。まつりが戦後間もなく始まった宗教儀礼を起源とし、政教分離に配慮したものとみられます。一方で社会的儀礼を踏まえた範囲なら政教分離に当たらないとする判例もあります。「NPO吉田城復元築城をめざす会」理事の古山由晴さんが、豊橋まつりのルーツとそこに込めた思いを歴史的背景とともに紹介します。

 

 豊橋市の長坂尚登市長は5月14日、豊橋まつり振興会の総会で会長を辞任しました。報道によると「運営に関与しない名誉会長」に就任したといいます。この一報に接し、私はほっとすると同時に違和感が交錯する思いを抱きました。地域との関係を絶たなかったことへの感謝の一方で、その過程には、行政の長として果たすべき文化的責任への理解と覚悟が十分だったのかという疑問が残ります。

 

 関係者によれば「名誉会長」という役職は元来この団体には存在せず、市長からの提案で新設されたそうです。本来であれば、会長職を引き受けることで、まつりと地域への連帯を率直に示すことができたはずです。それにもかかわらず、象徴的な関与にとどめるために新たな肩書きを設けたことは、市民に「市長はまつりから距離を置いているのではないか」という印象を与えたように思われます。

 

 はたして、こうした措置は本当に必要だったのでしょうか。市長が地域のまつり団体の長を務めることは、全国の自治体でも広く見られます。補助金の交付は、議会と行政の制度に則って適正に行われており、名誉職への就任が直ちに利害の衝突を招くとは考えにくいものです。むしろ、市長が文化的象徴として関与することで、市民に対して誠実さと信頼の意思を示すことができたのではないでしょうか。

 

 今回の判断の背景には、「政教分離」への過剰な配慮があったのではないかとの見方もあります。今年1月には「豊橋鬼祭」の奉賛会長辞退、今年2月の建国記念の日の奉祝行事に寄せた祝辞でも「関与できない理由」に多くの文面が割かれていたことは記憶に新しいです。これら一連の対応を見ると、宗教的な色合いを持つ行事への関与に慎重な姿勢が一貫してうかがえます。(つづく)

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古山由晴(ふるやま・よしはる)

NPO吉田城復元築城をめざす会理事。自民党愛知政治大学院11期修了。防災士。とよはし防災リーダー。

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