【新連載】若手秘書が見た永田町の現実〈1〉政治の歩みは止まらない

2025/08/04 00:00(公開)
参院議員会館(筆者撮影)

 7月20日、第27回参議院選は投開票日を迎え、今後6年間の国政を担う顔ぶれが決まった。テレビや新聞を中心とするメディアでは石破茂総理の進退や政局について注目されているが、いま永田町の参院議員会館はいつもとは違う慌ただしい時間、そして重苦しい空気が流れている。

 

 新たな顔ぶれが決まるということは、これまでの6年間の任期を終えた議員や秘書、スタッフが、次々と通いなれた職場を後にしていくということでもある。事務所によって事情はさまざまで、選挙に出馬せず引退した人もいれば落選した人もいる。

 

 かつて議員を守るため周囲に高圧的に接していた秘書も緊張の糸が切れたのか、顔が少しほほ笑んでいるようにも見える。去る人たちの姿を見送るのはつらいが、これも民主主義の定めだと自分に言い聞かせ、気持ちの整理をしている。

 

 投開票日からわずか4日後、議席を得られなかった議員は、議員会館に割り当てられた執務室と宿舎を明け渡さなければならない。各階に設置されているごみ集積場の扉を開けると、そこには机や書棚に詰め込まれていたであろう大量の資料や書籍が積み上がっている。3年後、今度は私自身がそこに書類を積み上げることになるかもしれないと思いつつ、複雑な気持ちで扉を閉めた。

 

 私は現在、自民党参院議員の事務所で公設第2秘書を務めている。学生時代から地元事務所にお世話になり、東京事務所に異動になって3年、秘書歴は7年目を迎えた。日々の国会対応や政策調査、スケジュール管理やSNS運用など、業務に忙殺される毎日を送ってきた。しかし議員が落選すれば、秘書は職を失う。この数日の出来事はそうしたリスクを抱えながら、日々国民とも向き合うのが「国会議員秘書」という仕事であると再確認した。

 

 秘書や事務所スタッフにとって、時に家族以上の時間を共にした議員との別れは、単なる「職の終わり」ではないと思う。まだ仕えた議員が落選したり引退したりした経験のない私は、この時期、秘書として長年議員に仕えてきた先輩や同僚の姿を見るたびに自分に置き換えて想像してしまうのだ。

 

 私が仕える議員は選挙の応援演説の中で「半数改選の参院の存在意義として国政は常に継続するという点にある」と言っていた。しかし、今の私の目の前にあるものは、落選した議員の退去と並行して、当選を果たした新人議員たちの入居準備が着々と進み、明け渡された事務室で職員さんによって机や椅子が配置され、電話回線が整い、名札が付け替えられるという現実だ。

 

 それでも、政治の歩みは止まらない。

 

 静かながらも新しい風が吹き始めている。次の6年間を歩み始める国会議員たちを迎える準備は、整いつつある。

 

    ◇

 20代の秘書が、永田町で感じたことをつづります。

 

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奥野蓮

1999年9月19日生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒。元自民党大阪府連学生部長。19年参院議員、松川るい大阪事務所入所。22年から東京事務所勤務。趣味は飛行機(写真・搭乗・航空無線)

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