「剣理人倫 我外皆師」〈57〉「星明読書 眼光紙背に徹す」

2025/09/06 00:00(公開)

 立秋から早くも1カ月が経ち、鈴虫やコオロギなどの虫たちが鳴き始めます。「虫時雨 銀河いよいよ 撓んだり」という俳句がありますが、さまざまな虫たちの鳴き声に呼応するように星空が撓んできたという意味です。まだまだ残暑が厳しいので秋が来たと感じるのは朝晩だけですが、私は虫たちの合唱に耳をすませ夜空を眺めるのが好きなので、この時期は夜目がききます。

 

 先日帰省した娘と外食しながら近況を聞きました。定期的にメールで報告するルールは全然守られていないですが、たまに聞いていたので現在の配属先と業務内容は把握していました。社会人1年目で世間の荒波にもまれていると思いきや、すこぶる元気で向上心がとても強く、どのような仕事をしても誰にも負けたくないと熱く語る姿にこちらが拍子抜けしました。

 

 会社で与えられた業務を一生懸命に遂行してくれれば満足ですし、毎日の仕事の一つひとつは社会へつながっているものです。私の時は最近の働き方改革に反するようなモーレツ社員が多く、野武士のような人もいましたが、今は個性豊かな人はいても古色蒼然(こしょくそうぜん)とした社員はいないと思います。これからは感性と知性が交ざり合ったハイブリッドな状態にある人こそ、一番求められる人間像だといえます。

 

 人生には三つの成長の場があるといいます。耐え忍んで活路を求める土壇場、自ら見つめて力を蓄える踊り場、自分の全てを注ぎ込む正念場です。娘はまだ階段をのぼっている段階で、見つめなおす踊り場にも行けていないです。常に周囲に気を配り、自分を信じてさわやかにそしてポジティブに努力して人間的魅力を高め、ハツラツ便りを送ってきてほしいです。

 

 嬉しかったのは忙しくても読書をする習慣をつけるように話したが、仕事同様勤しんでいるみたいで私の本棚から数冊持って行ったところに成長を感じました。娘を送った後、夜景を見ていたら雑木林から物音。クマかもしれないと五感で全集中していたら風の音だけで何もいなかったです。鱗滝さん、私はまだまだです。

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