豊橋市は5日夜、神野新田町の「豊橋総合スポーツ公園B地区」で計画作成を目指す新たな野球場について、市民説明会を開いた。建設予定地のB地区は津波の特定避難困難地域にある。変更を求める声がある一方、周辺住民も含む津波防災の機能強化で速やかに事業を進めるよう望む声も上がり、考え方が分かれた。
7月の住民投票を受け新アリーナ関連事業が継続の方針となった。すでに廃止された旧豊橋球場に代わる新設移転先としてB地区が候補に挙がっている。
市が8月19日に示した基本設計によると、B地区の南側約半分にメイン球場とサブグラウンドの3面の野球場を整備。B地区を含む公園全域が地震と津波に伴う特定避難困難地域に当たる。メイン球場などを指定避難場所とするため、理論上最大の津波高や液状化による地盤沈下を想定した盛土や地盤改良を施す。
競技団体の要望などを踏まえ、グラウンド外周の車通行可能な園路を設け、防球ネットを30㍍まで高くするなど当初より仕様を拡充させた。基本設計では概算事業費の見積もりをより詳細にしたため、事業費は18億円増の60億円となった。
用地取得と野球場や関連設備に約50億円、盛土などの造成費4億円、液状化対策と設計に各3億円を見積もる。約30億円は国の社会資本整備総合交付金などを活用し、工事費の半額と用地費の3分の1を賄う計画だ。
この日は牟呂や吉田方など近隣校区をはじめ80人余の市民が、昨年10月作成した基本設計に基づく説明を聞いた。都市計画部や文化・スポーツ部、防災危機管理課の職員らが参加者20人の質疑に応じ、予定を約30分延長した。
事業に反対する市民らは「新球場が津波の避難場所となっても、災害リスクが解消されたわけではない」と指摘。市議会で質疑があった高師緑地公園などリスクが低い土地への移設を求めた。高師緑地での立地について市は「災害リスクの回避を念頭に、面積的に収まることを確認した。それ以上の評価に至っていない」とした。想定する国の交付金についても「総合スポーツ公園が防災拠点となる位置付けで重点的な交付を受けられる。防災上の位置付けがなければ交付金を受けづらい」と背景を説明した。
一方、いち早い球場整備を望む声の多くが「前市長時代から続く長年の課題だ。子どもの1年や2年はあっという間だ」と恩恵を受けられない世代を少しでも減らすための配慮を求めた。
また、賛成する市民の中には「野球場以外に総合スポーツ公園全域で、施設ごとに避難者の収容可能人数を可視化すべきだ」とする前向きな意見もあった。指摘した男性は「スポーツイベントの開催時は、住民以外に来場者など1000人単位で避難者対象者が増えるだろう。人流増を踏まえた受け入れ体制を整えてほしい」とも述べた。
説明会は7日も午前10時半から「ライフポートとよはし」である。当日参加可。
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愛知県田原市出身。高校卒業後、大学と社会人(専門紙)時代の10年間を東京都内で過ごす。2001年入社後は経済を振り出しに田原市、豊川市を担当。20年に6年ぶりの職場復帰後、豊橋市政や経済を中心に分野関係なく取材。22年から三遠ネオフェニックスも担当する。静かな図書館や喫茶店(カフェ)で過ごすことを好むが、店内で仕事をして雰囲気をぶち壊して心を痛めることもしばしば。
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