豊橋中央高校で3日、戦争と平和を「加害者と被害者」という二つの側面から考える授業があった。東三河満蒙開拓団の一員だった橋本克巳さん(90)=名古屋市西区=を講師として招いた。未来探究の授業で「平和」コースを選択する2年生32人が聴き入った。
教室で、橋本さんは「小学校へ入る前に家族と満州へ渡りました」と語り始めた。国は旧満州(中国東北部)への移民を募っていたが、県内は名乗り出る人が少なかった。そこで小作人の多い奥三河で募集した。
祖母、父母、弟妹との6人家族が海を渡った。200町歩の土地と徴兵の免除が条件。ただ、与えられた土地は湿地帯で稲作もできない。「だまされたんですね」と橋本さん。家は元々住んでいた中国人から接収したものらしかった。
日米開戦と戦局の悪化で生活は苦しくなっていく。そして敗戦によるソ連兵の乱入、匪賊(ひぞく)による強奪などから逃れるため、日本人街のあったチチハルに向かった。
厳寒の中の200㌔の徒歩行進。道中でひどい目に遭いながら、橋本さんらは10日以上かけてたどり着いた。だが、シラミが媒介したチフスに襲われる。橋本さん以外は亡くなり、たった一人で引き揚げてきた。
生徒たちは、生々しい言葉に真剣な表情で聞き入っていた。質疑応答の時間もあり、橋本さんは丁寧に応じていた。
これに先立ち、9月には満蒙開拓平和記念館(長野県飯田市)の事務局長三沢亜紀さんのオンライン講座を受けた。日本の国策によって満州へ渡った開拓団員が味わった「被害」の側面と、現地の人の土地を奪った「加害」の側面の両方を学んだ。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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