職場で起こりうる「ハラスメント」に経営者や管理職はどう向き合えばいいのか。豊橋市柱三番町の「村井社会保険労務士事務所」代表の村井真子さんの新刊「職場問題ハラスメントのトリセツ」(アルク)は、それらの問いに向き合う一冊だ。現場で多発する事案を題材に、被害者、加害者、企業の三つの観点で取るべき対応や心構えを解説した。
「セクハラ」「パワハラ」のほかに、最近は介護を理由に職場で不当な扱いや嫌がらせを受ける「ケアハラ」や、過剰にハラスメントを主張する「ハラハラ」など、時代とともに多様化している。新型コロナウイルス禍で時差勤務やオンライン勤務など働き方が多様化し、文章でのコミュニケーションの誤解など、社員の心理状態が見えないことで、ハラスメントと受け取られるリスクも増した。だが、どれも根本は「人間関係」にあるという。
村井さんは冒頭で「人が集まれば誰もが加害者にも被害者にもなりうる」と指摘する。「ハラスメントは、悪意の有無ではなく『ズレ』から起きることが多い。例えば、長時間の熱血指導も、受け手によっては『圧』になる。逆に、注意できない上司は『放置』として批判される」とマネジメントの難しさを説く。
「基礎編」と「実践編」の2部構成となっている。前半ではハラスメントを類型化し、被害者と加害者になりやすい人の特徴などを解説。後半では32のケースを取り上げる。「良かれと思って子持ち社員のキャリア機会を奪う上司」「自分のやり方が正しいと思い込む指導者」「相談をスルーする上司」など、現場で頻発する場面を具体的に描いている。法律の定義や懲戒基準を踏まえ、事案への対応を事細かに説明した。「重い処分に踏み切ることばかりが正解ではない。配置転換で十分なケースもある」と説明する。
村井さんが強調するのは「人間を道具として扱わない」こと。「部下を『自分の手』だと考えると、必ずあつれきを生じる。相手も感情を持つ人間だと一度立ち止まるだけで関係は変わる」と力説する。「自己開示と他者受容が重要。自分の癖やストレスの傾向を伝え、相手の特性を受け入れる。できないことは得意な人にお願いし、依頼の言葉遣いを変えるだけで印象が違う」と助言する。
購読残数: / 本
1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
週間ランキング
日付で探す