伊良湖温泉の泉質を生かした塩づくりのワークショップが14日、田原市八王子町の古民家であった。新たな観光土産の開発を目的に市民が企画した「塩(えん)結びプロジェクト」の一環で、来年2月の発売が決まっている。この日は食品会社や飲食店など地域を巻き込んだ新たな活用法でも意見交換した。
プロジェクトは、同市赤羽根町で飲食業などを営む藤井恵美子さんが企画した。市が昨年度開いた「伊良湖温泉ビジネスプランコンテスト」での奨励賞を機に、地元資源を生かした観光土産として商品化。温泉水を原材料にした塩は東海地方でも例がないという。
三方を海で囲まれた伊良湖地区では、古墳時代から平安時代にかけ塩づくりが盛んだった。製塩遺跡から、濃縮した海水を釜で煮詰める「平釜製塩」が行われた史実も残る。能登や赤穂などで現在も残る伝統製法で、まろやかな味わいが特徴だ。
伊良湖温泉は市の掘削調査で2020年度に源泉が確認され、22年度から配湯が始まった。ナトリウムやカルシウムを含み、海水ほど濃度は高くないが塩分を含んだ泉質が特徴だ。
今回商品化する塩は藤井さんの食品加工施設で製造される。ドリッパーの要領で、ろ過した濃度の高い海水に温泉水を10%混ぜて煮詰める。配合した海水1㍑から約30㌘の塩がとれる。表浜海岸の6カ所で採取するが、場所は「企業秘密」という。
ワークショップは市の今年度「まちづくり実践塾」で開いた。全6回の塾で製塩と古民家をテーマにした体験型プログラムを学べる。
この日は約20人が参加してガスコンロと土鍋で伝統製法を再現した。濃縮した海水を煮詰め、のり状になるまで水分を蒸発させた。余熱で粒状になるまでかき混ぜ、約1時間かけて完成させた。
愛知大学の古山果歩さんは「ゼミで観光を学んでいるので、伊良湖温泉や地元食材などの活用法に関心がある。市外への発信と地元消費で活用できそう」と述べた。
作った塩は炊き立てのご飯に混ぜ、おにぎりにして試食。参加者との意見交換では食品会社や飲食店などが活用に前向きな姿勢を示した。一般参加者も土産品のほか「塩づくり体験で観光だけでなく地元の親子向けに食育にも役立つ」などのアイデアが出た。
藤井さんは「塩が土産品のほか体験観光の資源として役立つことも再認識できた。今後は量産化や安定供給などにも取り組みたい」と展望を示した。
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愛知県田原市出身。高校卒業後、大学と社会人(専門紙)時代の10年間を東京都内で過ごす。2001年入社後は経済を振り出しに田原市、豊川市を担当。20年に6年ぶりの職場復帰後、豊橋市政や経済を中心に分野関係なく取材。22年から三遠ネオフェニックスも担当する。静かな図書館や喫茶店(カフェ)で過ごすことを好むが、店内で仕事をして雰囲気をぶち壊して心を痛めることもしばしば。
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