豊橋市出身の女子プロレスラーの玖麗(くらら)さやかさん(25)=スターダム=が地元に凱旋した。約1年8カ月ぶりとなる豊橋での試合で、観客の大声援を背に勝利を飾り、ファンに確かな成長の跡を示した。
昨年の2月にあった初の凱旋試合では、「憧れ」の中野たむさんとタッグを組んだ試合に敗れたが、今回の試合では白星を獲得。「豊橋の皆さんに成長した姿を見せられた」と笑みを浮かべた。会場には応援ボードやタオルを持つ大勢のファンが駆けつけ、紙テープが舞った。「一人ひとりの声援が温かく、力になった。豊橋は本当にすてきな街」と感慨深げに話した。
玖麗さんの歩みは異色だ。子どもの頃から絵を描くのが好きで、高校卒業後は東京芸術大学を目指して上京し、3浪して挑戦を続けた。予備校の費用を稼ぐために居酒屋でアルバイトをしていたある日、来店客に「プロレス面白いよ」と観戦を勧められた。
軽い興味で訪れたのは2022年9月のスターダムの高田馬場大会。「コスチュームも照明も華やかできらびやか。でもリングの中では本気でぶつかり合っていた。全くプロレスを見たことはなかったが、こんな世界があるんだと思った」。翌日も試合を観戦し「5★STAR GP」決勝では中野さんとジュリアさんの死闘に心を奪われた。「私もここに立つ」とその日にオーディションに応募した。
翌年3月にスターダムへ入門。当時22歳。運動経験はほとんどなかった。「最初はスクワットもまともにできず、初日に肉離れしました」と頭をかく。同期は一人だけだったが、歯を食いしばって残った。「とにかく練習がきつかったが、あの頃の必死さが今につながっている」という。
デビューは23年12月、都内の大会でスター選手の上谷沙弥さんと対戦し、スタークラッシャーからの片エビ固めで敗れた。「コテンパンだった。何もできなくて、頭が真っ白になった」と振り返る。敗戦を糧に努力を重ね、3月に初勝利。同年春には「シンデレラトーナメント」で優勝し、初のタイトルを手にした。「あの時、初めて自分はプロレスラーだと実感した」
最も成長を感じるのは「心」。「デビューの頃は焦ってばかりだったが、応援してくれる人が増え、自分の中でも『やれる』という自信が生まれた」と話す。今大会に向け、地元企業やファンがポスター掲出やイベント協力を申し出た。「こんなに多くの方が支えてくれるのかと驚いたし、うれしかった。その期待に応えたいという気持ちが強くなった」と話す。試合では力強い「ときめきスピアー」を決め、歓声に包まれた。「自分の全身でぶつかっていく技。運動経験が少ない自分にぴったり。デビュー戦からずっと使っている大事な技」という。
試合後、「いつか新アリーナでスターダムとして大会を開きたい。そのためにもっともっと頑張って、スターダムを広めたい」と宣言。今後の目標について「ベルトをとれる選手になりたいし、王座の上谷さんにはまだまだだが、いつか追いついて追い越したい。そのためにもっと体を作って、技の精度を上げたい」と意気込んだ。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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