臨時国会開会中は補正予算の審議に加え、政府提出法案審議や税制改正大綱の取りまとめなどで忙しい毎日になる。特に年末が近づくにつれ、事務所には多くの陳情客が訪れ、また要望書が山のように届く。前回は税調という場の緊張感や独特の文化について注目したが、今回は、国民の皆さまからの要望がどのように自由民主党税制調査会の議論に落とし込まれ、税制改正大綱を取りまとめていくのかをお伝えしたいと思う。
税調の議論はインナーと呼ばれる幹部会議と全自民党国会議員が出席できる平場の会議をそれぞれ開きながら進められていく。幹部中心の少人数会議は党所属国会議員から要望や指摘のあった内容と財務省の主張を整理・調整する場として機能している。一方で全議員が出席できる平場の会議では、現場の声と政治的観点から幅広い議論が行われ、当日の会場の雰囲気(発言に対する同調がどの程度あるか)などを勘案しながら、次回幹部会議で整理されるべき事項を決めている。財務省側の理屈と政治側の現実をうまくすり合わせながら、国民生活にダイレクトに影響する税金の議論を進めているのだ。
今回の税制改正をめぐる自民党税調の議論は、昨年11月19日に開催された税調勉強会からスタートした。勉強会では所得、法人、自動車、国際課税といった主要分野が議題として取り扱われ、今次改正の論点について説明があった。私の理解では、この段階では「要望が上がってきている事項について、所属議員の関心がどこにあるかを幹部が見定める」意味合いがあると思っている。
続く税調総会では、経済、財政状況と税収、地方財政と地方税収などの税制改正を行ううえで必要な現状の共有がなされた。いわばこれから始まる税の議論において基盤となる財政状況や税収の規模感などの情報を議員にレクチャーする会だった。
税調で私が面白いなと思ったのは、自民党政調の各部会から重点要望を聞き取る部会長ヒアリングだ。この会議で取り扱われる要望は各部会で事前審査のうえ、了承されており、議員個人が1回発言できる平場での議論とは異なる。幹部に対して行われる部会長の発言は重く、比較的、要望が通りやすいと私は感じた。それゆえに各省庁は自らの所掌に関わる改正項目について、部会長や族議員に入念な根回し(事前調整)を行ったうえで、会議に臨むことになる。
ここまでは、税制改正大綱をまとめるための事前の地ならしにすぎない。税調の本番は、要望事項を採用するか否かといった「判断」の局面だ。
本格的な議論が平場の会議でスタートすると、各項目は目に見える形でシビアに審議される。会議では「電話帳」に記載された「○×」を基準に議論が行われる。電話帳には○は受け入れ、△は検討、×は見送り、△法は法案を見て判断など、各項目ごとに幹部会の判断が記載されており、実現するためには△以上の結論の導けるかがカギとなる。私はこの工程を見ていて、「声が大きいか」よりも「根拠と整合性があるか」が問われる場だと感じている。理屈が通らないものは認められないため、各議員は自らの言葉で幹部を説得しなければならないのだ。この緊張感こそ、税調特有の会議風景かもしれない。
しかし世の中は理屈で解決できない問題も多々存在する。○×だけでは決め切れない論点については「マル政」審議で議論されることになる。マル政とは政策的問題として検討する項目として別途取り扱い、処理案を作り、再度議論して文章へ落とし込んでいく。マル政審議にかかる案件については政治的側面が色濃いため、平場の会議での意見を踏まえ、幹部会議で大枠が決まっていくのが永田町の現実だ。
最終的に総会で税制改正大綱(案)が示される。写真の税制改正大綱案(連立与党の日本維新の会との協議前の自由民主党としての最終案)は「基本的考え方」「具体的内容」「検討事項」という政策文書の骨格を備えている。振り返ると、税調の議論は要望を拾い上げる場であると同時に、要望を選別し、整合させ、言葉にして決める場でもある。年末に決定される一冊の文書は、綿密な議論の積み重ねによって作成されているのだ。
税は国家の収入であり、公共サービスの質を支える基盤である。他方で税制は、単に財源を集める仕組みにとどまらず、控除や優遇措置といった形で、経済成長や投資促進などの政策を達成するうえでの武器にもなる。公平性・簡素性・中立性という税の基本原則を守ろうとすれば制度は硬くなり、政策的なメッセージを込めようとすれば例外が増えて複雑化しやすい。税制の議論を目の当たりにして思うのは、財務省の理屈と政治側の現実が絶妙なバランスで支え合い、税制改正大綱が完成するということだ。
昨年12月26日、政府は令和8年度税制改正大綱を閣議決定した。いわゆる年収の壁の引き上げや住宅ローン減税の5年延長、企業の設備投資促進税制が柱だ。今年の税の議論は終了した。通常国会で関連法案を提出し制度に落とし込まれていく。国民の負担や暮らしの実感に直結していく税制の議論は令和8年末に向けてまた新たな一年がスタートした。
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1999年9月19日生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒。元自民党大阪府連学生部長。19年参院議員、松川るい大阪事務所入所。22年から東京事務所勤務。趣味は飛行機(写真・搭乗・航空無線)
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