県は、県内の戦争遺跡の現状をまとめた「愛知県戦争遺跡調査報告書」と「愛知県戦争遺跡マップ」を刊行した。
昨年に戦後80年を迎え、戦争体験者からの証言を得ることが困難になる中、戦争の記憶を継承する役割が遺跡に求められている。一方で、年月による風化や開発による消滅が加速している現状がある。県はこれに対応するため、1996年から2004年にかけて行った調査のその後の状況を把握すべく、23~25年度にかけて現地調査を実施した。
今回の調査で把握した県内の戦争遺跡は全388件に上り、そのうち280件が現存していることが確認された。さらに、専門家の監修により選定された主要な戦争遺跡20件については、文献調査などによる詳細調査が行われた。
その中で特に注目されるのが、かつて軍を支える拠点が多数置かれた東三河の戦争遺跡だ。豊川市には、「東洋一」と称された「豊川海軍工廠(こうしょう)」があった。現在は平和公園として整備され、第1火薬庫跡や第3信管置場跡が残存しており、これらは爆発の被害を防ぐための土塁に囲まれた半地下式の構造を今に伝えている。
また、豊橋市には陸軍の施設が集中していた。豊橋公園内に残る歩兵第18連隊の門や、日清戦争や日露戦争の合葬墓がある豊橋陸軍墓地が現存している。愛知大学の敷地には、第15師団司令部の木造2階建ての庁舎や師団長官舎が残り、国の登録有形文化財などに指定されている。さらに、本土決戦に備えて構築された第73師団高山戦闘指揮所の地下施設や、豊橋海軍の航空隊基地跡なども詳細調査の対象となった。
田原市に残る陸軍第1技術研究所伊良湖試験場跡では、大砲の試験場や観測所の建物などが確認され、多岐にわたる兵器試験の実態が明らかになった。
刊行された報告書とマップは、県内の公立図書館や高校、平和資料館などに配布されるほか、県の公式ウェブサイトでも公開される。
大村秀章知事は「本報告書が、県内における戦争遺跡の基礎資料として、適切な保存と継承に向けた取り組みのための一助となれば幸いだ」と述べた。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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