現役の小学校を映画のロケ地として活用し、制作現場を子どもたちの「生きた教材」とする試みが豊橋市内で広がっている。映画撮影を誘致、支援する一般社団法人「とよはしフィルムコミッション(FC)」が仲介役となり、各校は撮影協力を通じて、児童に郷土への誇りを育んでもらおうとしている。
その象徴的な一作となったのが、昨秋公開された映画「ストロベリームーン 余命半年の恋」だ。2023年刊行の芥川なおさんの原作を実写化した作品は、當真あみさんや中条あやみさんら豪華キャストが出演し、興行収入4億円を超えた。物語の7割以上が東三河で撮影され、豊橋総合動植物公園(のんほいパーク)や豊川市の豊川稲荷前の門前通りなどが登場する。
豊橋市立多米小学校もその一つ。酒井憲一校長は「授業以外でも多くの思い出を作らせたい。創立150周年に学校が映像に残ることは地域の誇りになる」と考え、協力を快諾した。一昨年の夏休みに約120人の児童らがエキストラとして参加し、体育館で中条さん演じる警察官と交流するシーンや入学式の場面などの撮影に臨んだ。男子児童は「有名人に会える緊張で早く目が覚めた」と声を弾ませた。女子児童も「自分たちが画面に映るのが不思議な感覚だった」と振り返った。
現場では映画撮影の厳しさも感じた。自転車教室のシーンや入学式などで10回近い撮り直しが続き、数十分間動かずに待機した男子児童は「プロの仕事を間近で見られて勉強になった」と話した。完成作を劇場で鑑賞した別の男子児童は「現場で演技を見て号泣し、1年分の涙を使った」と、圧倒された様子だった。酒井校長も、監督から通用門の風情を評価されたことで「日常の何気ない景色の中に感動があることに気づかされた」と語り、エンドロールの校名を目にして「撮影を受けて良かった」と感動したという。
本来、現役校での撮影はハードルが高いが、豊橋市では24年の日本テレビ系列のバラエティー番組「有吉の壁」のロケを機に協力依頼が急増している。ホームページでもカテゴリごとに検索できる使用可能なロケ地の数を増やすなど、受け入れ体制の強化も加速中だ。その効果からか、FCの一昨年、昨年度の支援実績は増加傾向にある。そのうち学校は1割弱。
FCの藤沢英樹さんと大木敏行さんは「専務理事の鈴木恵子さん(2023年死去)が築いた信頼を基盤に、ノーと言わない、不可能を可能にする、かゆい所に手が届くという姿勢を貫き、今後も活動していきたい」と意気込む。
劇中では、バス停での初デートのシーンで本物の虹が映り込む瞬間も収められた。同作は、「アマゾン・プライムビデオ」で視聴できる。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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