豊橋市の多目的屋内施設(新アリーナ)建設を巡り、事業者との契約解除を阻止する内容に条例改正した市議会の議決取り消しを長坂尚登市長が求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は23日、市長の請求を棄却した。貝阿弥亮裁判長は、重要な契約の解除について、条例によって市議会の議決事項と定めることは適法との判断を示した。
判決などによると2024年9月、当時の市長が約230億円に上る新アリーナの整備・運営事業に関する契約を事業者と締結した。しかし、同年11月の市長選で計画中止を公約に掲げた長坂市長が初当選し、事業者に対して契約解除に向けた協議を申し入れた。
これに対し市議会は同年12月、重要な契約を解除する際には議会の議決を必要とするよう条例を改正した。長坂市長はこれを不服として再議を求めたが、市議会は25年1月に同条例案を再度可決した。県知事への審査申し立ても棄却されたため、市長は提訴に踏み切っていた。
訴訟で市長側は「契約を解除する権限は市長の専権事項であり、議会の議決対象とすることは地方自治法に違反する」と主張した。また、条例改正の目的が市長単独の判断による契約解除の阻止にあり、議会の裁量権の逸脱だと訴えた。
判決で貝阿弥裁判長は「契約の解除は、契約規模や内容によっては自治体の財政運営などに大きな影響を与える」と指摘した。そのうえで、議会の議決を経て締結した重要な契約の解除は「事柄の性質上当然に市長の専属権限と解すべきとはいえない」とし、条例で議決事項に定めることは可能であると結論づけた。さらに、約230億円という事業規模を踏まえれば、契約解除を議会の判断対象とした市議会の対応について「裁量権の逸脱や乱用には当たらない」として長坂市長の訴えを退けた。
市議会提案の改正条例は、議会決議で成立した2億2500万円以上の工事・製造請負契約について、契約解除する場合は議会の決議を要することなどを内容とする。
訴訟で市は契約解除は市長の専権事項と主張した。一方、議会側は「条例による議決事件の追加を可能とする」とした地方自治法96条2項による権能拡大を主張した。総務省の「地方制度調査会」も地方議会のあり方について2005年12月の答申で、法定受託事務や政令で定めるものなどを除く議会の議決可能な範囲を弾力的に認めることが自主性や自律性を拡大するとしている。
市は、判決が届いて2週間以内に控訴すべきかを判断する。
長坂市長は24日の定例記者会見で「判決書が届いていないので詳細は分からない。裁判所の考えを確認したうえで、対応はしかるべきタイミングで知らせる」と述べた。
市議会の小原昌子議長も「市の訴えが棄却されたと聞いたが、判決文が届いていないため確認できない。現時点で申し上げることはない」などとコメントを発表した。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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