豊橋市の長坂尚登市長は11日の記者会見で、多目的屋内施設(新アリーナ)建設を機に、事業者との契約解除を市議会の議決要件に加えるとした条例改正案の取り消しを求めた名古屋地裁判決について控訴しない考えを明らかにした。4月23日の一審判決は議会の主張を適法と認めていた。同様の事案を盛り込んだ条例は全国でも例がない。
市側代理人の足立陽一郎弁護士によると、地裁の判決文から法的事実や法解釈を精査し、事実誤認や論理矛盾がないことから控訴取りやめた根拠などを説明した。併せて同日付で改正条例を公布した。
長坂市長は「市の主張は出し尽くした。地裁も一つひとつの主張に対して正面から取り組み、あいまいさも残さず明快な論旨で答えてくれた。弁護士の所見は、判決文から受けた印象と同じ感触だったので一審判決を受け入れた」と控訴見送りの判断理由を示した。
市が結ぶ事業契約について、地方自治法は締結時の議会議決を要件に挙げている。一方、契約解除は現行法で明文化されていないが、市側も判決では議会権限として射程範囲内と解釈した。
今後、判決確定を経て判例となれば、全国の自治体で類似の条例改正が進むともみられる。長坂市長は「判決は明文化されていない部分で新しい判断を示した。多くの自治体運営や法学研究に大きな影響を与える」との認識を示した。訴訟や判決文などの関連資料については「さまざまな研究に役立てられるよう、今夏までに順次公表したい」とした。
市側が控訴を見送った理由の一つに、首長と議会が「二元代表」の民意を同等に得ている点への配慮を挙げた。そのうえで双方の権限配分のあり方を争った。
一定規模以上の重要な契約締結については、地方自治法96条1項に議会の議決要件として盛り込まれている。一方、地裁判決は契約解除について法で明文化していない96条2項の範囲のあいまいな点について踏み込んだ判断を示した。
争点の一つだった議会の権限について、足立弁護士は「判決に法的な事実誤認はなく、裁量について新たな法解釈に踏み込んでいる。230億円余りの契約が市財政に与える影響を踏まえ、市長への議会の監視機能を重視した点に対し、正面から否定する根拠がほどんどない」と控訴を見送った理由を述べた。
市議会の小原昌子議長は「判決で議会の議決が違法ではないとする主張が認められたことはうれしく思う。市長が控訴しないことと、改正条例を速やかに公布したと報告も受けた。今年は市制施行120周年の記念すべき年でもある。議会と市長は互いの権限と責任に配慮し、意見調整に努めて市政停滞を避ける責務がある」と市長判断を歓迎した。
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愛知県田原市出身。高校卒業後、大学と社会人(専門紙)時代の10年間を東京都内で過ごす。2001年入社後は経済を振り出しに田原市、豊川市を担当。20年に6年ぶりの職場復帰後、豊橋市政や経済を中心に分野関係なく取材。22年から三遠ネオフェニックスも担当する。静かな図書館や喫茶店(カフェ)で過ごすことを好むが、店内で仕事をして雰囲気をぶち壊して心を痛めることもしばしば。
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