豊橋市と石灰石関連製品の製造販売「菱光石灰工業」(東京都豊島区)の共同研究グループが、ごみ焼却施設の飛灰(ごみを燃やしたときに出る灰)処理技術に関する論文を発表した。執筆者は、市職員の壁谷将範さん、下間裕泰さん、松井孝誌さんと、菱光石灰工業の冨田裕也さん、浅野禎彰さん、山谷良紀さん。市資源化センターが直面していた二つの大きな課題を、現場の知恵と独自の工夫で同時解決した。
研究テーマは、ごみを燃やした際に出る灰を運ぶベルトコンベヤーに頑固な汚れが付着して運転が止まってしまう問題と、将来的な環境基準の強化を見据えた有害物質「六価クロム(有害な重金属)」の溶出抑制という課題だった。
ごみ焼却施設では、排気ガスに含まれる有害な酸性ガスを取り除くため、消石灰などの薬剤を吹き込んでいる。しかし、センターの「ガス化溶融炉」と呼ばれるタイプの高熱でごみを溶かす施設では、この過程で生じるカルシウム化合物や塩類が原因となり、コンベヤーに泥のような灰の塊がこびりつく現象が多発した。物質が空気中の水分を吸収して自然に溶けていく「潮解」という現象で、夏場などの高温多湿期には、2日ほどでコンベヤーが緊急停止する事態となっていた。
現場は、まずコンベヤーの速度を落とすなどして、連続運転日数を2日から10日へと延ばしたが、根本的な解決には至らなかった。そこで注目したのが、水分を調整する機能を持つ「天然ゼオライト(多くの隙間を持ち、水分や分子を吸着する性質がある鉱物)」という粉末の活用だった。
粉末をごみ溶液の混練機(灰と薬剤を混ぜ合わせる機械)の直前で加えたところ、潮解による水分が吸収され、灰がベルトから剥がれやすくなった。そして目標の30日連続運転を達成した。
これがもう一つの課題であった「六価クロム」の対策へと発展する。ガス化溶融炉の内部は非常に高温になるため、壁面にはクロムを含む特殊な耐火レンガが使われている。これが原因で灰の中にわずかな六価クロムが含まれてしまう。これまでは塩化第一鉄という液体ベースの薬剤を混ぜて基準値を下回るようにしていたが、今年4月から法律が変わり、最終処分場から出る水の規制が一段と厳しくなったため、より高度な除去技術が必要とされていた。
技術陣は、天然ゼオライトの実験で成功した「混ぜる直前に粉末を投入する手法」を応用し、液体の薬剤よりも鉄の含有量が多くて還元作用(有害な物質を無害な形態に変える化学反応)が強い「硫酸第一鉄」の粉末を追加した。
ここで大きな障壁となったのが、新たな粉末を投入するための高価なプラント設備を新設する予算の確保だ。市職員らは、現在は全く稼働していなかった「セメントサイロ(粉末を貯蔵しておく大型の円筒形タンク)」に着目した。この遊休設備を職員自らの手で修理して復活させ、天然ゼオライトや硫酸第一鉄の粉末を投入できるシステムへと生まれ変わらせた。
これを使い、天然ゼオライトと硫酸第一鉄をあらかじめ混ぜ合わせた「混合品」を灰に投入する実証試験をしたところ、コンベヤーへの灰の付着が大幅に抑えられ、連続運転可能な期間は二つの対策の併用によって推定60日へと飛躍的に向上した。同時に、六価クロムの溶出量も、従来の液体の薬剤だけを使っていた頃に比べて劇的に減少させた。
今回の取り組みにかかった費用は、非常に低く抑えられている。市の職員らと共同研究グループが自らの技術力と創意工夫によって、施設の安定運転とより高いレベルでの環境保全を両立させた事例は、全国の自治体や廃棄物処理施設の維持管理技術の向上に向けて、先進的なモデルケースとなりそうだ。
論文は公益社団法人「全国都市清掃会議」が発行している「都市清掃」の7月号に掲載された。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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