ラットが好物チョコで「おいしい!」の鳴き声

2026/09/28 00:00(公開)
チョコが「おいしい」と鳴くラット(イメージ)
チョコが「おいしい」と鳴くラット(イメージ)

名大院と福井大などの研究グループ

 福井大学医学部の深澤有吾教授や村田航志助教、名古屋大学大学院生命農学研究科の塩谷和基助教、奈良県立医科大学らの共同研究グループは、ラットが好物のチョコレートを食べながらヒトには聞こえない特別な超音波で鳴いていることを発見したと発表した。AIを活用した分析により、「食べるのを待つ声」と「食べている最中の声」を高精度に区別することに成功した。研究成果は国際学術誌「eNeuro(イーニューロ)」に7月17日付でオンライン掲載された。

 ラットは以前から、ヒトが聞き取れる可聴域(音の限界である約20㌔ヘルツ)を超える高周波の「超音波発声(ヒトには聞こえない高い鳴き声)」をすることが知られていた。仲間と遊ぶ際や好物を期待するときには約50㌔ヘルツ帯で鳴き、心地よさや楽しさといったポジティブな感情を示すとされる。しかし、実際に食べ物を口にして味わっている最中の鳴き声については、十分な解明が進んでいなかった。

 研究グループは、ペアで飼育したラットにチョコレートを与え、その前後の音を専用マイクで記録した。得られた音声データを「DeepSqueak(ディープスクィーク)」と呼ばれる深層学習ソフトウェアで自動抽出した。さらにロジスティック回帰という機械学習の手法を用いて音の特徴を数値化し分類したところ、食べている最中の鳴き声は周波数が約40㌔ヘルツ帯とやや低めで、時間の経過とともに音の高さがいったん上がってから下がる「逆U字型」の波形を描く独自の特徴を備えていることが判明した。

 この特徴的な声が単なる咀嚼(そしゃく)に伴う物理的な雑音ではなく、脳内で感じる「おいしさ」に由来するかを確かめるため、研究グループは検証実験を行った。脳内で快感や報酬感の伝達に関わる神経回路の仕組みである「オピオイド」の働きを抑える阻害薬「ナロキソン」をラットに投与した。すると、ラットはチョコレートを食べ続けたものの、特有の「40㌔ヘルツ帯・逆U字型」の鳴き声が著しく減少した。この変化は、この鳴き声が単なるあごの運動音ではなく、脳が快感や満足感を味わう情動体験と密接に結びついていることを裏付ける。

食行動異常や味覚障害の解明に期待

 動物の「おいしさ」や食の満足度を声から客観的に評価する技術が確立されれば、過食や拒食といった食行動異常の病態解明や、味覚障害による生活の質(QOL)低下を防ぐ医療技術の開発に寄与すると期待される。研究グループは、今回確立したAIによる鳴き声の解析手法を他の動物や行動場面にも応用し、動物の感情や意思伝達の解明を進める方針だ。

実際の実験の様子(提供)
実際の実験の様子(提供)
) 写真3:「40㌔ヘルツ帯・逆U字型」の波形(提供)
) 写真3:「40㌔ヘルツ帯・逆U字型」の波形(提供)
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山田一晶

1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。

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