さよなら故郷 設楽ダムに沈む集落①

2016/11/29 00:01(公開)
紅葉した庭のモミジに別れを告げる窪野さん=設楽町八橋で
 設楽ダム建設で廃村となる設楽町八橋地区。水没する集落で住民が次々と移転した中、“最後の住人”だった窪野欣也さん(76)が28日、片付け作業を終え、実家に別れを告げた。東愛知新聞では、水の底に沈んでも決して消えない「故郷」を紹介していく。
 八橋西路の一軒家。境川のせせらぎが聞こえてくる。窪野さんは妻・富子さん(68)と夏から豊川市内の自宅とを往復し、片付けを進めてきた。幼少期と学生時代を過ごし、子どもらが独立してから再び身を寄せた実家は、来月初めに取り壊される。「この紅葉を見るのも、これで最後だな」。切らなければならない赤く色付いた庭のモミジを見つめた。
 ダム湖の水面は、満水時で標高約440㍍。石垣の上に立つ窪野さんの実家も、ちょうど屋根の高さまで水につかる。
 八橋の49世帯をはじめ、地区そのものが消滅する川向、大名倉を含めて移住を余儀なくされたのは124世帯。近隣住民は6年前から徐々に移住していったが、窪野さんはなかなか実家を手放せなかった。「寂しいね。ふるさとは誰にとっても恋しいものだよ」。
 友達と遊んだ八橋小学校も、元日にご近所さんと新年を祝った公民館も、今は雑草が生える更地と化した。知生山を望むのどかな風景を目にすると、涙と共に思い出ばかりが込み上げる。
 八橋出身の住民は半数が設楽町内、その他は町外に移った。家がなくなってもドライブがてら“帰省”する人は後を絶たない。田口地区で葬式を挙げ、地元住民と“再会”を果たした故人もいた。
 ダム完成予定は10年後。工事が進むと、いずれ里帰りさえもできなくなる。窪野さんは「離れていても、なくなってしまっても、ずっと八橋を思い続ける」と言った。
(由本裕貴)
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