健康寿命を考えるべき時代

2017/05/13 00:00(公開)
人口の高齢化と減少に直面する日本は、諸外国に先駆けて歴史上、未曾有の状況に入ろうとしています。問題は認知症をはじめ、数々の慢性疾患を抱えて長生きしても健康でない人の数が増え続けていることにあります。少しでも健康でありたいという人々の願望が、健康食品・サプリメントの売り上げにも端的に表れています。年々増加するこれらの商品の売り上げは現在、約1兆5千億円に達し、将来的には3兆5千億円の市場規模になると予想されています。ところで、<健康上の問題で日常生活が制限されずに過ごせる期間である「健康寿命」が現在、大きな注目を集めていますが、現状はどうでしょうか。
グラフを見ていただければ、一目瞭然ですが、日本人の人生最後の約十年は不健康=病気だということがすぐにわかります。考えるまでもなく、一年間に約1兆円ずつ増加している医療費の財源問題を解決するには、これから、どれだけ、健康の人を増やせるかにかかっていることは言うまでもありません。にもかかわらず、日本人の健康に対する意識は、まだまだ低いのが現実です。すでに世界保健機構(WHO)は、1998年に健康を「健康とは、身体的・精神的・霊的・社会的に完全な良好な動的状態であり、単に病気あるいは虚弱でないことではない」と明確に定義しています。ここで言う霊的な健康とは、人生の意味感、希望、充実感、安らぎなどがもたらしてくれる健康を、社会的な健康とは、家族、友人、配偶者、子供たち、あるいは職場や地域の様々な人々の絆が十全に機能していることがもたらしてくれる健康を意味しています。如何でしょうか。この定義に基づいて、あなたは自分自身を健康だと言い切ることができるでしょうか。ところで、お隣の浜松市が20大都市(19政令指定都市+東京都区部)のなかで健康寿命が一位だということで話題になったことがありましたが、それでも男性:72.98歳、女性:75.94歳に過ぎません。今、問われているのは罹病してからの治療やケアではなく、罹病しないための事前の予防や健康増進だということです。その意味で私たち一人一人の「ヘルスリテラシー」=健康増進、予防・保健・医療・福祉に関する知識、情報を理解、評価し、活用する力が試されています。もちろん、企業おいてもできうる限り、健康な職場を目指すべきですし、地域コミュニティにおいては、住民の健康はその地域のかけがえのない資産だという発想が強く求められています。たとえば、栃木県の大田原市では、<1日に8000歩を歩くことによって1人当たり、年間4200円の医療費削減になる>という厚生労働省の試算に基づいて「めざせ300万歩」というウオーキング推進事業を健康政策課が2013年から手がけています。また、上田清司埼玉県知事は、日本の生産年齢人口を20~74歳で考えれば、2040年には日本が生産年齢人口割合で世界のトップになるという興味深い指摘をしています。そして、月から木曜日は65歳未満の方が、金、土、日曜日、は65歳以上の人が働くシステムを構築すべきだという大胆な提言もしています。何れにしろ、将来のあるべき姿を発想の出発点として「今」を大胆に変えることが健康寿命を延ばすことについても求められています。
(取締役統括本部長 山本正樹)
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