甲羅長30㌢のクサガメがこのほど、岡崎市宇頭町のアニマルカフェ「みんなのどうぶつえん Zooっといっしょ」に引き取られた。名前はカメ子で35歳の雌。カフェを昨年8月にオープンしたオーナー伊藤絵美子さんによると、とても健康だという。飼い主だった女性は5月28日に77歳で亡くなった。背景に、動物福祉団体「命にやさしいまちづくり ハーツ」による長年の献身的な世話があった。これは亀と猫と女性とボランティアたちの物語である。
8年前、女性は蒲郡市の自宅周辺の野良猫30匹にキャットフードを与えていたが、捕獲手段がなく、経済的な理由から不妊・去勢手術ができずにいた。そこで電話相談したのがハーツの古橋幸子代表だった。古橋代表によると、2部屋だけの小さな家の中には18匹の猫がいたという。一部は自費で手術したが、残りと近隣にいた外猫はすべてハーツが捕まえて手術を済ませた。
その後も毎月1回、ハーツが猫の餌などを届けた。女性は体調が悪く、時々入院するようになった。女性の家までハーツの拠点の豊橋市からは車で1時間以上かかる。2024年、古橋代表が蒲郡で猫の世話をしてくれるボランティアをブログやSNSで募ったところ、岡崎市の社会福祉士、前本好江さん(61)が名乗り出た。間もなくして蒲郡市の看護師、牧野志保さん(38)が加わった。
2人はフルタイムで働いているが、女性の入院中は家に来て十数匹の猫に餌をやり、トイレの砂を替え、掃除をするなどした。前本さんはまず、猫の写真を撮り、命名して一覧表にした。女性は一部に名前を付けていたが、ほかは全部「チビ」だったためだ。
猫の世話と同時に、カメ子の面倒も見る必要があった。冬場は冬眠するが、それ以外は水を張ったアクリルケースの中に入り、日光浴を楽しんでいたようだ。女性が縁日で買ってきたという。
古橋代表が聞き取ったところによると、女性は芸者置き屋の養子として育てられ、自身も芸者になった。売れっ子で「警察を担当していた」などと話したそうだ。生涯、独身だった。
年金は最低額しか受給していなかった。それなのに金銭感覚はどこかおかしかったという。ごみを出すのを頼んだだけで1万円札を差し出したこともあるらしい。アルバイト先に知られたくないからと、生活保護の申請もしなかった。市の医療費補助制度を受けられたはずだが、それも申請していなかった。
女性は今年1月に食道がんで名古屋市の大学病院に入院した。医師は抗がん剤治療や手術が難しいことを説明した。余命を尋ね「1カ月か2カ月」と伝えられると「亀と猫が無事ならば、未練はない」と言い、豊橋市の病院に転院して緩和ケアを受け始めた。
3月、蒲郡市の会社員、市川弥生さん(37)が手伝いを申し出た。3人はローテーションを組み、今も休むことなく猫の世話を続けている。
5月半ば、古橋代表は女性の手を握り「亀と猫は心配しないで。私たちが守っていくから」と約束した。女性は、カメ子が35年間1匹で生きてきたので、たくさんの亀がいるところに行っていじめられることを心配していた。カメ子に自分の人生を重ねていたのかもしれない。10日後、息を引き取った。
牧野さんは夜にしか来られないため、カメ子に日光浴させるのが難しいと自宅に連れ帰った。しかし集合住宅なのでペット禁止。日光浴用の大きな水槽に入れて外に出すのは困難だ。小水槽に入れて屋内で世話をしながら、新しい飼い主を探した。
やがてアニマルカフェが水槽で1匹飼いをしてくれることが分かり、カメ子を引き取ってもらうことが決まった。カフェの伊藤さんは「愛情を持って育てられたのだと思います。この年齢でこんなに動くのかと思うくらい元気。甲羅の形もきれいで、十分に日光浴をさせてもらっていたのでしょう」と話した。
3人でのローテーションにも限界がある。ハーツは蒲郡市で猫の世話をしてくれるボランティアを募集している。問い合わせは古橋代表(090・6461・0049)へ。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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