豊橋、豊川市にまたがる「松原用水・牟呂用水」が先月、国際かんがい排水委員会(本部インド)の「世界かんがい施設遺産」に登録。16日に東京で伝達式があり、日比敏雄・松原用水土地改良区理事長と古関充宏・牟呂用水同理事長が、そろって登録証や記念盾を受け取った。松原用水は今年通水450周年、牟呂用水は130周年。これを機に12月2日午後1時半から、豊川市文化会館で記念行事が催されるなど、両施設のもたらす恵みにスポットが当てられそうだ。
松原用水・牟呂用水はともに、豊川から「牟呂松原頭首工」(新城市一鍬田)で取水する施設。頭首工から牟呂松原幹線水路を5・3㌔流下し、「照山分水工」(豊橋市賀茂町)で豊川右岸の松原用水、左岸側の牟呂用水に分かれる。合わせて約1600㌶の水田を潤し続けている。
うち松原用水は1567年、吉田城主・酒井忠次によって開墾されたという、県内最古の農業用水施設。照山分水工から豊川をサイホンでくぐって右岸側に出て、約12㌔流れて再び豊川に落水する。牟呂用水は1887年、大規模新田開発(神野新田)に伴う水源として開削された。照山分水工から豊橋市内に入り、市街地を抜けて神野水田までの全長約23㌔。戦前戦後は簡易プールや洗濯場として利用されたほか、現在も「530運動」で地元中学生が清掃奉仕するなど、市民に親しまれている。
わが国では今回、松原・牟呂用水のほか土淵堰(青森県)、那須疏水(栃木県)、小田井用水路(和歌山県)も登録され、これで世界かんがい遺産登録施設は計31施設となった。県内でこの登録を受けたのは、入鹿池(犬山市)明治用水(安城市など)に次いで3番目。
伝達式は農林水産省本館で開かれ、同省の荒川隆農村振興局長からそれぞれ、4施設の代表者に登録証など手渡された。続いて出席者同士による意見交換会があり、これを機に、用水施設に対する住民理解を高めていくいくことで合意した。
12月2日に開かれる記念行事は、松原用水土地改良区の主催。記念式典に続き愛知大学名誉教授の藤田佳久氏が「450年の歴史を守った松原用水の役割と流域の地域像」をテーマに講演する。参加無料だが事前予約が必要。申し込み・問い合わせは同改良区(0533・86・0220)まで。
(藤田彰彦)
秋の「530運動」で、校区を流れる牟呂用水の清掃に励む豊橋市牟呂中の生徒たち(同市提供)