東三河の農業や祭りを知ってもらおうと、東京・六本木ヒルズアリーナで24日に行われるイベント「エロティック東三河」で、夢をかなえる男性がいる。障害を抱えながら、さまざまな人の協力を経て、応援する豊橋市のご当地歌手・久美さんの晴れ舞台を観覧する。
「夜、寝られないくらいうれしい日々が続いています」。こう話すのは、現地に行くことが決まった豊橋市佐藤町の中村秀史さん(56)、通称「しゅわっち」さんだ。
2人の出会いは3~4年前の市内のアコースティックライブ。歌を披露する久美さんについて「言葉で表せないくらい素敵な歌声だった」と振り返る。以降、出演するイベントには可能な限り足を運び、最前列で応援し続けた中村さん。だが、そんな日々を突然、病魔が襲った。
昨年7月、大動脈解離を発症。ベッドから起き上がれない日々が続き、将来への不安にさいなまれていた中村さんを救ったのは久美さんだった。「寝たきりにならないでね」。見舞いに来た久美さんの一言が、中村さんをリハビリに向かわせた。
現在でも、左足にまひが残っており、杖を使いながらでも長距離の歩行は難しい。1人での車いす移動も制限があり、「東京へ行きたいが、身体的に無理。地元でできることをやろう」と、初めて東京のステージに立つ久美さんらのため「エロティック東三河」の情報をSNSで熱心に発信してきた。
そんな中、絆づくりも目的に掲げる主催団体の寿プロジェクト側が、中村さんを六本木へ招待しようと計画。福祉車両のレンタル代と介護スタッフ2人の人件費を工面した。
「瞬きせずに目と心に焼き付けたい」と中村さん。久美さんへ「最高の歌声を響かせてほしい」と願う。
エロティック東三河では、東三河の食を紹介するブースやお祭りステージとして「豊橋鬼祭」(豊橋市)や「花祭」(東栄町)などの披露があるほか、久美さんらご当地歌手、田原出身のお笑いコンビ・オアシズ、豊橋出身のモデル桃月なしこさんらが登壇し、イベントを盛り上げる。
(飯塚雪)