県は6日、豊田市の養豚農場で5日に発生した豚コレラを疑う事例について、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究部門(動衛研)の遺伝子検査で、豚コレラと確認されたと発表した。
確認されたウイルスは、県のイノシシや岐阜県の豚、イノシシと同一と判明。県は、当面の措置として家畜伝染予防法、豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針、県豚コレラ対策実施要綱に基づき、豊田市の発生農場(飼養頭数=繁殖豚1140頭、肥育豚5500頭)について、部外者の農場立入制限、畜舎の消毒、豚コレラ防疫部会及び現地の豊田地域豚コレラ防疫部会による防疫措置開始した。
今後、発生農場の豚をすべて殺処分し、埋却などの防疫措置を実施することとし、陸上自衛隊第10師団に災害派遣を要請して活動を開始した。
また、発生農場を中心とした半径3㌔の区域を「移動制限区域」として豚などの移動を禁止するとともに、半径10㌔以内の移動制限区域に外接する区域を「搬出制限区域」として搬出を禁止した。移動及び搬出制限区域内には養豚農場6戸があり、1110頭を飼養している。
さらに感染拡大防止のため、移動制限区域と搬出制限区域周辺の主要道の周辺8カ所に消毒ポイントを設置、畜産関係車両の消毒を始めた。
一方、田原市にある関連農場(飼養頭数=肥育豚1600頭)については、1月19日と2月2日に発生農場から移動した肥育豚を中心に147頭を県中央家畜保健衛生所で精密検査、うち72頭が陽性と判定された。
同市内にある農場では6日、防疫措置として殺処分が始まった。移動・搬出制限区域は設けていない。
県のこれまでの調べでは、1月以降、発生農場から長野、岐阜、滋賀、大阪、三重の5府県に計140頭の子豚が出荷されており、一気に豚コレラ発生の府県が拡大した。
事態を重く見た農林水産省の小里泰弘農林水産副大臣が6日、急きょ岐阜、愛知両県庁を訪れた。
愛知県庁では、森岡仙太副知事らと会い、状況報告を受け「これ以上(の拡大)は看過できない。気を引き締め、何としてもまん延を食い止めたい」と沈痛な面持ちで語った。
(後藤康之)
田原でも殺処分
田原市内の関連農場では6日午後、殺処分にあたる約120人がバスで到着。その後、作業を始めた。周辺には別の畜舎も並ぶ中、白色の防疫服を着た作業をする人、埋設用の穴を掘る重機と、物々しい雰囲気となった。
田原市では1980(昭和55)年、豚コレラが369頭発生。山下政良市長は「愛知県と連携し、本市の行うべき対応について万全を期して取り組み、一刻も早い終息を目指す」とした。一方で、田原産の農畜産物に対する風評被害を懸念。「豚コレラは豚やイノシシの病気であり、人に感染することはありません。感染した豚肉が市場に出回ることはありませんが、仮に感染した豚肉などを摂取しても人体に影響はありません」と訴えている。
県内の養豚農場の大半は東三河に集中し、特に田原、豊橋両市は養豚が盛ん。田原市の農場で感染が確認され、農家ら関係者は危機感を募らせる。
40戸の養豚農家がいる豊橋市では7日から、防疫対策のため消石灰の配布を始める。昨年9月と12月に続き3回目となる。
要望があった18戸に対し、1戸当たり10袋(1袋20㌔)を配る。また、畜舎や機械の消毒などに使う消毒薬も1週間ほどで21戸の農家へ郵送する予定だ。
東三河食肉流通センター(豊橋市)では5日、処理場内外の洗浄と消毒剤の散布を実施。岐阜県で感染が確認された昨年9月以降、車両の消毒などに職員が立ち合い、監視体制を強化している。
豊橋市の飼料会社は養豚農場への出入りの際、車のタイヤ周りや運転席下のマット、運転手らにも消毒の噴霧機を当てるなどの対応をとる。「消毒を徹底するしかない」。拡大を防ぐため、業界関係者は防疫対策を講じる。
豚コレラの感染が確認された農場に向かう人たち=田原市内で