任期満了に伴う豊橋市長選は11月1日の告示まで半月となった。立候補を表明しているのは五十音順に、県議の浅井由崇氏(58)、現職の佐原光一氏(66)、弁当販売業の鈴木美穂氏(46)。選挙戦を引っ張る浅井、佐原両氏の掲げる施策は似通った点も多いが、重点の置きどころなどで徐々に違いも明らかになってきた。
「子育て・教育」最優先の浅井氏
浅井氏が最優先するのは「子育て・教育」の充実だ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大都市から地方への移住希望者が増えている。流入増が期待できる子育て世代の関心が高い分野は、集会でも最初に訴える分野だ。
教育費の負担減をはじめ、情報技術を活用した教育水準の底上げ、乳幼児保育や放課後児童クラブの充実、保育士の処遇改善など幅広い。
中でも、小学校の給食費無償化は実行すると断言。食材の地産地消と質向上も掲げる。また、国の施策にならって情報技術を活用した授業を推進する「GIGAスクール構想」豊橋版の実現を目指すとしている。
経済活性化では、県のスタートアップ事業に連動し、浜松地域と連携を強める考えだ。産学官の一角である大学は豊橋技術科学大をはじめ、浜松医科大や静岡大学工学部も巻き込んで農業や医療分野の先端企業育成と事業創出を見込む。
広域連携の促進も柱の一つだ。隣接する市と手を組んで、病院や公共交通、保育などの乗り入れをしやすくする連携を模索する。
国とのパイプを強調する佐原氏に対し、浅井氏は「政令市を除く市長は国を直接動かすことは不可能。県を動かす魅力的な提案が先決で、そのために戦略本部設置や組織改革が必要」と説く。
国とのパイプで佐原氏はハード面拡充
佐原氏は3期12年の実績と、古巣の国土交通省など国とのパイプを生かすハード面の充実が特徴的だ。政策集は「自立・挑戦・共生」を3本の柱とし、九つの政策に新たに加えた「コロナ対策」を掲げた。
特徴が顕著な基盤整備では、道路建設について三河港臨海部の明海から御津に沿った臨港道路の早期整備を打ち出した。通勤と物流が混在して大渋滞を引き起こす同地区が、他の競合地域と互角に渡り合うには避けて通れない課題だ。
また、市内石巻地区を走る東名高速道路にスマートインターチェンジ新設を掲げる。
広域連携の促進でも浜松三ヶ日・豊橋道路の早期建設は、就任当初から関わった施策だ。併せて、静岡県境に近い三弥・細谷地区に工業団地の新設と企業誘致を盛り込んで、製造と物流の集積拠点づくりを図る。
教育分野では、要望も多い給食費無償化について「今は環境整備が先決だ。老朽化した校舎やグラウンドの更新など学びの環境改善を優先させる」という。
オンラインでのプログラミング実習や理数系教育の強化を通して、論理的思考力を備えた高度な人材育成を視野に入れる。実施済みの英語教育充実とあわせて、グローバル人材の育成にも弾みをつけたい考えだ。
【安藤聡、加藤広宣】