世界的なインフレが懸念されているが、東三河の企業にも徐々に影響が出始めている。
豊橋市内の和菓子店は、さまざまな製造原価の高騰に見舞われている。最も影響が大きいのが菓子を蒸すために使うボイラー代で、昨年は年360万円だったが、今年は原油価格の高騰を受けて年500万円を超えると予想する。さらに菓子を入れる箱代が2割、包装紙は1割上がった。材料に使う小麦も2~3割ほど上昇している。同店の社長は「この1年の価格上昇は過去にない勢い」と話す。
店は約100人の従業員がいるが多くがパート。この数年の最低賃金上昇もコストアップにつながる。最低賃金が700円代の時代に比べ、人件費の支払いが年240万円の上昇になったという。
店では商品の価格を上げて対応する。「品質で勝負するしか私たちには道はない。おいしい菓子を届けて、価格が上がっても多くの皆さんに味わってもらえるよう頑張る」と力を込める。
同市の銅を加工する工場では、銅価格の急騰に頭を抱える。「これだけ一気に価格が上がると、急落するリスクがある。どのタイミングで素材となる銅を仕入れるかで、業績が大きく変わる。判断が難しい」と語る。
電気代の高騰も経営を圧迫する。豊川商工会議所の会見が10日に開かれたが、笠原盛泰副会頭は「電気代が1年で1~2割上がっている。私の会社も影響を受けている」とコメントした。
豊川市内の注文住宅を設計施工している企業では、ウッドショックほか、台所、浴室、トイレなどの設備機器の高騰の影響を受けている。従来なら3000万円の家が、場合によっては3600万円になるケースも。社長は「注文住宅から建売住宅に切り替える人もいる」と現状を説明する。
最低賃金は上昇しても、それ以上の給与で働く会社員の給料は上がりにくいのが現状。注文住宅を建設する企業では、上昇していないのは職人の人件費だけという。
この社長は「生活コストが上がっても給料が上がらなければ、家を建てたくても断念する人が出てきて、新築住宅の着工件数が下がる。ほかの産業でも同じ現象が起こり、悪循環になる可能性がある」と厳しい予測をする。
【竹下貴信】