三河8市で初の防災サミット 広域災害見据えたネットワーク構築へ

2025/12/10 00:00(公開)
BCPについて議論する各市の防災担当職員ら=三井住友海上火災保険愛知東支店で
BCPについて議論する各市の防災担当職員ら=三井住友海上火災保険愛知東支店で

 三井住友海上火災保険愛知東支店は9日、岡崎市の同社ビルで「第1回三河地区防災サミット」を開いた。豊川、蒲郡、田原、岡崎、西尾、刈谷、豊田、安城の三河地区8市の防災担当者が一堂に会し、広域災害を見据えた自治体間の連携強化や、官民一体となった防災体制の構築について協議した。同社員を含め約30人が参加した。

 

 サミットは、自治体同士の横の連携に加え、保険会社のノウハウを組み合わせた「防災ネットワーク」の構築を目的としている。まず、南海トラフ地震の被害想定や、近年激甚化する自然災害などについて説明があった。また、広域災害時にこのネットワークがいかに早期復旧に寄与するかという意義を提起した。同社の損害調査情報を活用して迅速なり災証明発行を目指す「被災者生活再建支援サポート」や防災教育コンテンツ「HIRAQ(ヒラク)」などの各種支援メニューを紹介した。

 

 会合では、能登半島地震で被災した石川県七尾市の職員がビデオレターで登場し、被害状況、発災時の初動や職員の参集の課題について実体験を語った。

 

 これを受け、参加した各市の担当者は、事前に共有した各自治体の業務継続計画(BCP)の比較資料をもとに意見を交換した。具体的には「何割の職員が集まれるのか」「通信手段」「職員のトイレ」「職員用の食事」「防災アプリ」など、自分が聞きたいテーマを他市の職員に聞く形で進行した。和やかな雰囲気ながら、真剣な発言が続いた。また、西尾市の担当者が「HIRAQ」の導入事例を紹介した。

 

 同社が自治体防災に積極的に取り組む背景には、地域の防災力向上が保険会社の事業リスク管理にも直結するという認識がある。自然災害の激甚化は保険金支払額の増大を招く。地域全体の復旧力を高めることは、被災規模の軽減につながり、結果的に企業の持続可能な経営にも資するためだ。サミット開催は、単なる社会貢献を超え、地域密着型リスクマネジメントの一環として位置付けられている。

 

 今回のサミットを皮切りに、同社は定期的な開催を通じて自治体間の実務ネットワークを強化し、三河地区全体の防災体制の底上げを目指す構えだ。民間のノウハウを生かした官民連携の取り組みは、人口減少や財政制約が進む地方自治体において、新たな災害対応モデルとなる可能性がある。

 

 高橋尚忠支店長は「次回以降、さらに研究して会議を続けたい。自治体だけでなく、金融機関や地元の企業にも参加してもらい、広域防災ネットワークをつくることで地区の発展にも貢献していきたい」などと締めくくった。

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山田一晶

1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。

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