豊橋市在住の「ササやん」が、バンダイスピリッツ主催のプラモデルのコンテスト「MIX30 MINUTES MISSIONS」で上位6人に贈られる「MIXマスター賞」を受賞した。応募総数5482人の中から選ばれ、9月中旬に都内で開かれた最終ステージに登壇した。
「昼間の顔」は、豊橋市つつじが丘にある「小石マタニティクリニック」総務部の笹野晃一さんだ。黙々と事務仕事をこなし、エアコンの調子を見たり、ドアの修理をしたりすることも。細やかな気配りと手先の器用さで職員から信頼を集め、親しみを込めて「ささやん」と呼ばれている。総務部の伊藤真依子さんは「普段は寡黙で誠実。笹野さんが全国6人に選ばれたと聞き、職員一同で歓声を上げました。YouTubeでステージに登壇したライブ配信を見ながら『頑張れ!』と応援していました」と笑顔で語る。
夕暮れを過ぎ家に帰るとプラモデル職人の顔になる。夕食を食べ終えると、机の上に無数のプラスチックパーツを並べ、繊細な手さばきで組み立てていく。ほぼ毎日続けており「だいたい午後9時から深夜までの数時間が制作時間」と話す。
コンテストのテーマは「夢中になれる30分」。市販の「30MLシリーズ」の全パーツを自由に組み合わせ、塗装せずに完成させるというルールだった。通常、上級者ほど塗装技術で個性を出すが、今回は「色を塗らない」ことが条件。パーツ本来の形と構造、色の組み合わせだけで勝負するという技術が問われる大会だった。
受賞作は100を超える部品を組み合わせた一体で、コンセプトは「弱き者を強く」。「エターナディアシリーズ」4型の最新鋭機で、異世界とつながった際の時空のゆがみで未知の装備が備わった設定。特にこだわったのは足首部分で「扁平な足をヒールのように調整し、立ち姿の美しさを出した」と語る。「地味だが、部品の理解度や色の使い分けを高く評価してもらえた」という。
プラモデルとの出合いは中学時代。家族と訪れた百貨店で偶然開かれていた展示会で「零戦の模型を見つけ、一瞬で心を奪われた」と振り返る。苦労して完成させた一体は、少年の心にものづくりの喜びを刻みつけた。
受験期に一度離れるが、社会人になって偶然見たアニメ映画「機動戦士ガンダム00」の機体に再び心を動かされた。「映画を見た翌日にその機体のプラモデルが店頭に並んでいて、あの感動を手で再現できるのがうれしかった」と語る。新型コロナウイルス禍に出合ったのが今回の「30MLシリーズ」。「手に取りやすく、自由に組み替えられるのが魅力」と話す。
笹野さんは「自分の『かっこいい』を形にするのが楽しい」と言う。奇抜さよりも、バランスの取れた美しさを追求する作風は、誠実な性格そのもの。部品の多くは地元の模型店で購入し、「箱を見て想像するのが楽しい」とも。
プラモデルの魅力について「失敗も含めて楽しい」と即答。「思い通りにいかない時こそ、どうリカバリーして理想に近づけるかを考える。それが一番面白い瞬間。今後は賞を狙うより、まずは楽しむこと」と話していた。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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