豊橋養鶉農協(豊橋市西幸町)の理事会運営を巡り、組合長らの法令違反で組合に損害を与えたとして、元理事が組合長らに3億円の損害賠償を求めた組合員代表訴訟で、原告と組合長らの証人尋問が10日、名古屋地裁豊橋支部であった。理事会議事録の作成担当者に対する尋問では、改元前に「令和」で日付が記載された点などを指摘。適法な理事会運営の信ぴょう性などが問われた。
原告の河合章幹(ゆきもと)さんの陳述などによると、幡野喜一組2014年年以降、無効な理事会決議に基づく運営を常態化させた。自身が営む「幡野ファーム」を優遇する方針などが一部役員によって決められていたと主張する。
理事会の意思決定を巡っては、自身の親族や組合の完全子会社「豊橋養鶉」に関与するコンサルタントの税理士、取引先の飼料会社社長らでつくる「経営会議」が間接的に影響を与えていたとも指摘している。
これに伴い、卵の販売協力金や、うずら飼育数を増やすと支払われる増羽奨励金といった、架空の補助金などが組合長の農場へ支払われた疑いも持たれている。組合出荷時の卵価を他の組合員と差別化するなど、農協法に反する不公平な運営の常態化も指摘している。
このほか、金融機関への融資返済で生じた余剰金3000万円を一時的に組合長の父(元理事)の個人口座へ振り替えたことも明らかになった。
河合さんら一部組合員は20年5月、監督者の県に組合への検査請求書を提出。県は6月の検査を踏まえて、これらの法令違反を指摘した検査結果を通知し、改善状況報告書の提出を命じた。組合は報告書で指摘された法令違反や定款違反も認めている。
取引先が支払う販売協力金について、幡野組合長は尋問で「卵の増産への支援」とする主張を否定した。その上で「健康被害を防ぐための衛生管理を求められていた。ISO(国際標準化機構)の基準を満たした生産者に支払われる。河合さんは衛生管理が不十分だった」などと反論した。
3000万円の余剰金の取り扱いは現顧問税理士(兼組合監事)に相談したと証言。幡野組合長は「卵代金の前渡金として会計処理を提案された」などと答えた。これに対し、原告側は「現在の顧問税理士は当時、組合とは無関係だった。部外者が組合の会計処理に意見を出したことになる」と問題点を指摘した。前渡金はその後、預託金として再処理された。
さらに、増羽奨励金を決めたとする理事会の議事録を巡っては、担当した現職理事への尋問で記載された年月日の矛盾を指摘。原告側は「18年10月時点で、翌年5月に改元した『令和』と記した点は不自然だ」とし、証拠の信ぴょう性が疑わしいと追及した。
この日で弁論は終結した。来年3月25日に判決が言い渡される予定。
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愛知県田原市出身。高校卒業後、大学と社会人(専門紙)時代の10年間を東京都内で過ごす。2001年入社後は経済を振り出しに田原市、豊川市を担当。20年に6年ぶりの職場復帰後、豊橋市政や経済を中心に分野関係なく取材。22年から三遠ネオフェニックスも担当する。静かな図書館や喫茶店(カフェ)で過ごすことを好むが、店内で仕事をして雰囲気をぶち壊して心を痛めることもしばしば。
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