事業活動の新たな資金調達方法として定着しつつある「クラウドファンディング」(CF)について学ぼうと、豊橋市は活用法や利点など「はじめの一歩」を後押しするトークライブを同市駅前大通2の「市まちなか図書館」で開いた。CFでの調達に成功した市内の事業者らを迎え、気軽に取り組める良さや資金調達以外にも使える利点などを学んだ。
新型コロナウイルス禍で消えた需要を取り戻そうと、市は昨年度「新ビジネスチャレンジ応援補助金」を設けた。初年度は使途をCF運営者への手数料に限ったが、今年度は商品デザインなど制作費まで広げ、金額も10万円に倍増した。
この日は、食品製造販売「豊橋糧食工業」(入船町)を営む伴野公彦さんと、ピザ専門店「ピッツェリア ネアポリス」(向山町)の綿引裕三郎さんがきっかけやアピール方法を紹介した。
綿引さんは店内用の燻製調味料「狼煙(のろし)」の商品化でCFを活用。3カ月で調達目標額の7倍超を達成した。
来店者の強い要望で非売品を商品化した。「やるなら、東三河を代表する土産品にしたい」と瓶詰めと木箱のパッケージデザインを新調。大手CFサイト「マクアケ」には、5年前の煙突火災で煙まみれになった経験から生まれた商品の開発物語をつづった。
綿引さんは「火災で店主も燻製になった経験談とコピーが、テレビなどのメディアから注目を集めた」と説明した。
伴野社長は老舗製麺所との連携で大麦を使ったグルテンフリーの生パスタを商品化。目標額の約5倍を調達した。第2弾では大麦を使ったお好み焼きも発売。現在はスイーツも開発中だ。
CFの活用方法の一つとして「テストマーケティング」を挙げた。計画段階で資金調達のアピールできるため、市場価値の判断材料にも活用できるという。
また、サイト活用のこつとして「高い目標額は設けず、まずは100%達成を目指すこと。これで注目度が高まる」などと述べた。
先行投資の負担が少ないCFを活用した商品開発について、2人は「リクスが減らせるうえ、市場価値や消費者の動向なども分かる」と利点を説いた。さらに「商品への思い入れをどう伝えられるかが肝心だ。見た目のきれいさより愚直さで訴えることが重要」と強調した。
トーク司会者で、CF支援も手掛ける「イーコンセント」(豊川市)の中村拓麿社長は、インターネット通販(EC)の前段階としての活用も助言した。
「ECでヒット商品を生むには、それなりの広告費が不可欠だ。CFサイトでは商品のニーズや価格設定の妥当性なども検討できる。運営側に支払う20%前後の手数料は必要経費として悪くないのでは」と語った。
【加藤広宣】