多くの小学校が採り入れている集団登下校は交通事故防止に役立つという分析結果を、豊橋技術科学大学の松尾幸二郎准教授(交通工学)と香川高専が共同発表論文で明らかにした。集団登校の実施状況と死傷事故発生状況との関連性を定量分析した学術データは初という。
集団登下校は1890年代に地域が自主的に導入したという資料も残るなど歴史は古い。1960年代には文部省も集団登下校の効果を認める一方、道路環境によっては事故に巻き込まれる危険性も指摘していた。文部科学省の2021年度調査によると実施率は全国平均60%だった。
松尾准教授らは、文科省データなどから都道府県別の集団登下校実施率と小学生1000人あたりの交通事故死傷者率を比較。全国でも実施率が最も高い(6~7割)愛知県は、小学生1000人あたりの死傷者数が最低の0・10人未満で、定量的な関連性が認められた。
さらに県内では市区町村別の実施率と事故率の比較のほか、通学目的での移動1回につき集団で動いた割合を示すデータを集計。延べ1000回の移動に対する事故発生率も定量化した。最多の江南市は1000回あたりの事故発生1・4件、中位の豊橋市は0・6件という結果だった。これらの結果から集団登下校の実施率が1%上がると、事故発生率は1・5~2・5%下がることが示された。
豊橋市教育委員会によると、市内の全52小学校で集団登校をしている。下校は、一斉下校を除き学年ごとに終業時間が異なるため、帰宅時は同学年や近所同士の複数児童での帰宅を呼び掛けている。
学校教育課は「長年の慣習で集団登校が定着しており、指導を意識していることもない。交通事故防止に役立つと科学的に立証されたことは幸いだ」と述べた。
松尾准教授は「集団登下校に積極的な県内でも、自治体によって状況が異なる。全国的にみても集団登下校の実施状況が異なる点など、まだ分からない点は多い」と研究課題も示した。
【加藤広宣】