豊橋技術科学大学は今年度、技術者に求められる豊かな人間性を養う「リベラルアーツ」(教養教育)=ことば=を拡充させた。教養重視は開学時からの特色だが、急速な科学技術の進歩や複雑化への対応を目指す学内改革の第2弾。今春は1年生向けに対話型を中心とする少人数授業が開講した。
今年度開講した「リベラルアーツ入門」は、異なる分野の教養科目を融合させた「分野横断基礎科目」の一つ。学部1年生を対象に選択履修できる。
講義は各20人ほどの少人数クラスで哲学や国内外の文学、経済学や法学などの人文社会系、化学や運動生理学、物理学など自然科学系の科目を学ぶ。同じ授業で異分野の教員2人が講義し、それらを融合したテーマで議論などもする。
分野横断をうたう講座の多くは、複数の科目を別日程のリレー形式で学ぶ「オムニバス」が一般的だ。一方、同大学では同じ教室で異なる科目を並行して学べる点に独自性がある。
大学によると「たとえば日本文学と材料工学の融合なら『つくる』などをテーマにできる。哲学と映像論を交えたテーマ設定など、多岐にわたる組み合わせも可能だ」と説明する。
リベラルアーツは欧米で古くから重視され、米マサチューセッツ工科大学などが有名。最近は国内でも、東京工業大学がジャーナリストの池上彰氏を特命教授に迎えるなど力を入れる大学が増えつつある。
豊橋技科大は1976年の開学当初から教養教育を重視し、2010年の学内再編で人文、社会に自然科学を加えた総合教育院を発足。14年を経てさらなる充実を図り入門講座を開いた。将来は3年生や大学院生、連携する高等専門学校の学生らにも受講対象を広げたいという。
統括する同大総合教育院の中森康之教授(日本文学)は「異分野融合の授業は教員の研究活動にもいい刺激になる。専門知識に偏らず、幅広く奥行きの深い技術者を育てたい」と意気込む。
【加藤広宣】
「リベラルアーツ」
複雑多岐な社会課題の解決へ向け、専門分野に偏らない考えや知見を学ぶ教養教育。複数領域を学び、融合させた少人数制授業などが特徴。古代ローマ時代の自由のための学問として重視された論理学や幾何学、天文学などを総称した「自由7科」が起源。