開設1年を迎えた豊橋市の「KMC産後ケアセンター」

2025/09/05 00:00(公開)
1年を迎えた「KMC産後ケアセンター」(提供)

 豊橋市の医療法人「小石マタニティクリニック」による「産後ケア事業」の委託医療機関「KMC産後ケアセンター」が同市つつじが丘1にオープンして1年を迎えた。母子ともに健やかな生活を送れるようにと、産後の母親が抱える悩みやストレスを受け止め、心身ともに回復をサポートしている。小石麻子理事長にこの1年の実績や課題を聞いた。

 

 産後ケア事業(母子保健法17条の2)は、市町村が出産後1年以内の母子に対して心身のケアや育児のサポートなどをし、産後も安心して子育てができる支援体制を確保する内容。2021年4月に施行された。

 

 センターは産後ケアに特化した県内初の施設として誕生し、東三河5市と静岡県湖西市、浜松市の産後ケア事業を受け入れている。産後1年までの母を対象としたショートステイ(8室)、デイケア(2室)があり、デイケアは第2子以降の、ショートステイは第1子の母の利用が多いという。 

 

 妊産婦の合併症として最も多いのが「うつ病」といわれる。亡くなる理由の最も多いものの一つは「自死」という悲しい事実もあり、産後のメンタルヘルスケアの重要性が叫ばれている。センターでは、専門スタッフが母親の授乳時の悩みの解消や傾聴でのストレス緩和、赤ちゃんの健康管理についてアドバイスするほか、併設する「KMCウィメンズヘルスクリニック」との連携で身体のリハビリにも協力するなど、各方面で支援している。

 

 今年7月までの1年間で、延べ1800人を超す人が利用した。授乳や沐浴、おむつ替えといった子育てについてのアドバイスを受けるほか、エステやアフターマタニティーのエクササイズを受けたり、理学療法士の指導を受けたり、1階のカフェでケーキセットを楽しんだりと、さまざまな方法でリラックス。託児もあり、赤ちゃんのきょうだいを一時預かってもらい、自由時間を作ることもできる。チェックイン時とアウト時では母親の表情がまるで違うという。

 

 「人が大切な事業」と小石理事長。母子のサポート、夜間のスタッフ配置や食事、環境など24時間体制できめ細やかにケアをするための人材育成にも力を入れている。育児に困っている人の中でも「産後ケア」について理解していない人も少なくない。「もともとは産婦人科の空きベッドでケアをしていたが、どうしても片手間になってしまうため、施設を立ち上げた。困っていることができた時のため、多くの人に知ってほしい」と呼び掛ける。

 

 課題もある。妊産婦が豊橋市に里帰り出産している場合でも、現住所が対象地域外だと制度的に公費での利用ができない。「里帰り出産をしても実家の事情でサポートが得られない場合もある。自費で利用される人もおり、制度の今後の整備も望まれる」という。

 

 デイやショートステイで利用できるのは、ベッドや鏡台が置かれた明るい部屋。円座や授乳クッション、飲料水とポットなどが置かれ、シャワールームもある。食事は部屋まで運ばれるが、2階ラウンジで他の母親と一緒に食べることもできる。「同じ立場のお母さん同士が話をすることで気分がすっきりしたり、利用後もお付き合いが続くケースもあります」と小石麻子理事長。

 

 市内の28歳の女性は4カ月の長女とデイケアを利用。小石マタニティクリニックで出産し、センターの利用は3回目。夫も周囲も協力的というが、元気いっぱいの年中児の長男もいるため疲れもたまる。この日は長男を託児し、長女とのんびり時間を過ごした。「少しでも長男をみてもらえると全然違う。リラックスして帰れます」と話していた。

 

 「産後の体調不良や育児への不安があったり、ご家族からの支援も困難だったりする時には、ぜひご利用ください。ネットで解決しようと試みる人もいるが、悪いことばかり目に付くケースもある。気軽に専門家に相談を」と小石理事長は呼びかける。

 

 センターでは毎月第2土曜の午後2時から、施設見学会を開く。妊娠中からの予約も可能。問い合わせは産後ケアセンター(0532・66・5143)へ。

 

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田中博子

 愛知県豊橋市生まれ。大学卒業後、校閲記者として入社。1年後に報道記者に転身した。2020年から報道部長。芸術、福祉、経済・奉仕団体などを担当する。趣味は、かなりジャンルに偏りのある読書と音楽鑑賞。思考のそっくりな一人娘と趣味を共有している。

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