私はショッピングモールが大好きだ。なんでもそろう、なんでも食べられる、暑さや雨も関係ない快適な夢のような空間…うれしいことに、そんな感覚をタイの人々とも共有できている気がしている。というのも、バンコクにはモールが多く、また毎年のように新しい大型モールが開業し、そのたびに世間の話題をさらってきたからである。
そしてこの9月、また一つ注目のモールが誕生した。バンコク中心部、名門ホテル「デュシタニ」の跡地に開業した「デュシット・セントラル・パーク」である。開発を担ったのは小売大手セントラルグループ傘下のセントラルパタナで、タイ初進出のレストランや多彩なストリートフード、さらに国内最大級の都市型屋上公園を備えており、まさに最新鋭の次世代型モールとして期待を集めている。
一方で、バンコクのモール市場全体を見ると、必ずしも順風満帆とは言えない。調査会社ナイトフランクによれば、2024年前半の小売店舗面積は約320万平方㍍に達し、前年同期比で4%増加した。一方で来店者数が同じように増えているわけではない。24年の小売店舗面積の増加に貢献した「ワンバンコク」も当初は大きな注目を浴びたが、現在は集客が落ち着きつつあるとも報じられている。中心部から少し離れたバンナ地区で計画されている「バンコクモール」も当初の予定から大幅に遅れ、開業は27年に持ち越される見通しだ。バンコクには大型のモールが増えすぎていると指摘する声もある。
こうした状況下で求められるのが「新規性」と「独自性」だ。どこに行っても同じブランドショップやレストランでは差別化は難しい。訪れるたびに新しい体験を提供できるかどうかが勝負を分ける。デュシット・セントラル・パークが屋上公園や多様な食の選択肢を前面に打ち出しているのは、まさにその戦略の一環だろう。
モールは私にとって快適な夢の空間であると同時に、都市経済の姿を映す鏡でもある。デュシット・セントラル・パークが単なる流行りの箱モノに終わるのか、それとも都市に新しい価値をもたらす存在となるのか。モール愛好家の一人として、その動向を期待を込めて見守りたい。
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