豊橋市南大清水町の芝生広場に子どもたちの元気な声が響く。乳幼児向け施設「Asobility Park(アソビリティパーク)」代表の中島真人さん(46)は20年以上にわたり保育の現場に立ち、現在は「遊びのプロフェッショナル」として活動している。
中島さんの青春はサッカー一色だった。中学では県大会2位と活躍したが、高校1年で右足首を大けがし、長期リハビリを余儀なくされた。目標を失い、友達と深夜まで遊ぶ時期もあったという。転機は高校3年の夏。男性教諭から「男性保育士が少ない。挑戦してみないか」と声を掛けられた。父がコーチをしていたバレーチームの子どもと遊んだ記憶がよみがえり、保育園の職業体験に参加。「これだ」と思い、保育の道を志した。
名古屋市内の専門学校で保育士資格を取得後、豊橋市内の保育園に勤務。買い物や食育、山登りなどの体験を取り入れた保育を実践し、縄跳びやあやとりの「級制度」も考案。「遊びには発達のすべてが詰まっている。夢中になれるからこそ、子どもは成長する」と実感した。一方、子どもたちの遊ぶ能力が低下していると感じた。「例えば、ボールやタオルを渡され、昔なら勝手に遊べていたのに、今は何をしたらいいか分からない子もいる。遊具撤去やボール禁止などで遊ぶ場も減っている」と指摘する。
2020年、父が余命宣告を受け「残された時間をともに過ごしたい」と長年勤めた園を退職。「子どもが安心して遊び成長できる場所をつくりたい」と父に誓った。
亡くなった父の土地を相続し22年、施設を開設した。名前は「asobi(遊び)」と「ability(能力)」の造語。天然芝と土のグラウンド、室内スペースを備え、年少児から小学生を対象に鬼ごっこやボール遊び、虫取りなどで考える力や挑戦する力を育てている。乳児も安心して過ごせるカフェスペースも併設し、保育士による育児相談にも応じる。
活動のもう一つの柱が、保育士の支援だ。「あそぼっ戦隊 マサトージャー」として、豊橋、豊川、岡崎の各市で保育園やこども園の研修講師を務め、遊びの理論や人間関係づくり、信頼関係の築き方などをテーマに指導。「保育士は子どもの成長を支える尊い仕事だが、悩みを抱える人も多い。学び合い、支え合う場をつくりたい」と言う。勤務後に気軽に語り合うオフラインサロンも主宰し、保育者同士の交流を促している。
中島さんは「遊びで身につく力は将来の社会で生き抜く基礎になる。どんな環境でも自ら工夫し、楽しめる子に育ってほしい」と願っている。「保育士も得意なことを生かし自由に働ける時代を切り開きたい」と話した。申し込みや問い合わせはあそぱー(0532・73・0757)へ。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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