豊橋市の長坂尚登市長は25日、同市神野新田町の「豊橋総合スポーツ公園B地区」で計画が一時停止している新野球場について、計画を再始動する方針を明らかにした。有識者に募った意見に基づく安全対策が可能と判断した。28日にはこれら識者の意見と市の今後の対応範囲を示した詳細を公表する。
新野球場は、豊橋公園の新アリーナ建設に伴い廃止された旧豊橋球場の代替施設として、2024年に整備方針が打ち出された。一方、市議時代から立地などに反対した長坂市長の就任で計画は一時休止状態。7月の住民投票で新アリーナ継続が決まり、市は豊橋球場解体が現実的となった8月に市議会で基本設計を示した。
スポーツ公園の全域が地震に伴う津波の「特定避難困難地域」に指定されている。コンクリート製スタンドのあるメイン球場付近は有事に約5500人の避難者を収容可能。市は総合体育館に続く一時避難場所としての活用を見込む。
一方、新球場の立地を巡り市民の賛否は大きく割れた。早期完成や新たな避難所の機能に期待する市民と、臨海部への立地や避難行動への懸念を示す市民とで考え方の溝は埋まらなかった。臨海部を除く代替地移転の要望もあったが、活用可能な補助金の要件に適さないなど実現性に乏しい点が指摘されていた。
この状況で長坂市長は10月、B地区への立地可否について専門家への聞き取り調査を判断材料にする考えを表明した。避難行動や建築構造、地質学など防災関連の知見を持つ識者から約1カ月かけて安全性に関する意見を集めた。
聞き取りで識者からは主に、施設整備と避難計画の一体化▽津波避難と津波火災、港のコンテナ浮遊への対策▽盛土やスタンド整備により高い安全係数を採用▽防災備蓄の確保―などの意見が寄せられたという。
避難計画は識者の意見に基づき、施設利用者や公園全体、対象地域などを踏まえて新規か既存計画の改定のいずれかを判断するという。当面は市民説明会ではなく詳細報告で理解を促す。
立地に反対する市民も一定数いることについて、長坂市長は「安全な施設を作るのが基本。付近は県の防災拠点でもあり、機能強化を図れる施設としたい」と述べた。
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愛知県田原市出身。高校卒業後、大学と社会人(専門紙)時代の10年間を東京都内で過ごす。2001年入社後は経済を振り出しに田原市、豊川市を担当。20年に6年ぶりの職場復帰後、豊橋市政や経済を中心に分野関係なく取材。22年から三遠ネオフェニックスも担当する。静かな図書館や喫茶店(カフェ)で過ごすことを好むが、店内で仕事をして雰囲気をぶち壊して心を痛めることもしばしば。
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