【連載】若手秘書が見た永田町の現実〈6〉解散総選挙の裏で

2026/02/16 00:00(公開)
国会議事堂(筆者撮影)
国会議事堂(筆者撮影)

議員と共に秘書も失職

 

 第51回衆院選は自民党の圧勝に終わった。秘書の立場から見るとこうだ。

 

 1月23日、衆院が解散された。議長が本会議で解散詔書を朗読した時点で、衆院議員は「現職」としての身分を失う。それに伴い、議員に任命されていた公設秘書も失職する。有権者にとっては数ある政治ニュースの一つでも、事務所側からすれば雇用関係が切り替わる区切りだ。

 

 解散となれば、総選挙に向けた段取りが一斉に動き出し、選挙戦が始まる。選挙事務所の開設や移転、パーテーションなど備品の手配、電話回線の準備、支援者への連絡など必要な作業は短期間で一気に増える。特に解散決定から公示日までの期間が短い場合、選挙カーや公営掲示板用ポスターなどの準備に使える時間も限られ、現場は相当タイトになる。加えて、公職選挙法に抵触しないよう細かな確認を重ねながら進めなければならず、専門知識のない人だけで回すのは現実的ではない。

 

 そこで見落とされがちなのが、業務の中心にいるはずの元公設秘書が、「無職」の状態で選挙期間に入らざるを得ない点である。実際のところ、秘書として求められる役割はほとんど変わらない。むしろ選挙前後は作業量が増え、時間も不規則になりやすい。その一方で、選挙後に自分の立場が「続くのか、終わるのか」は結果が出るまで確定しない。見通しが立たないまま日々の実務を回し続けることになり、精神的な負担は小さくない。落選や引退があれば職を失う可能性が高い以上、選挙期間中であっても生活設計や再就職のことを頭の片隅で考えざるを得ない。こうした感覚は、政治の現場にいないとなかなか伝わりにくいと思う。

 

 公設秘書は、各議員が政策担当秘書、公設第一秘書、公設第二秘書の3人まで任命でき、給与は衆院または参院から支給される「国家公務員特別職」に当たる。ただ、一般にイメージされる「公務員」=「安定」とは性格が違う。公設秘書は議員に付随する立場であり、議員が落選・辞職・死亡等で職を離れれば、秘書も失職する。また、雇用保険の対象外で、いわゆる失業保険もない。一方で、解散や任期満了で失職した後でも、仕えている議員が再選する、あるいは他の議員に採用されるなどして、解散日から40日以内に再任用されるケースがある。この場合に限り、退職手当の算定上、失職していた期間も「引き続き在職していたもの」とみなして勤続期間を扱う特例が設けられている。

 

 誤解されやすいが、これはあくまで退職手当の計算上の取り扱いであり、法律上は解散日から再任用日まで失業状態であることに変わりはない。一定の救済措置はあるものの、選挙のたびに雇用が不安定になるという現実は残る。

 

 解散は政治判断の一つであると同時に、解散の瞬間に465人の衆議院議員と、最大1395人の公設秘書が同時に失業することでもある。選挙は民主主義の根幹を成す重要なプロセスだ。だが、その裏側で、結果が確定するまで立場が宙に浮いたまま、準備と運営を回し続ける人たちがいる。有権者の目には候補者の動きが映りやすいが、選挙の実務は多くのスタッフの労働で支えられている。永田町の現場は、こうした不安定さを前提に回っている。

 

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奥野蓮

1999年9月19日生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒。元自民党大阪府連学生部長。19年参院議員、松川るい大阪事務所入所。22年から東京事務所勤務。趣味は飛行機(写真・搭乗・航空無線)

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