”脱サラ”し地域の記憶守る 豊橋に怪談・民話の私設図書館「夜に歩けど」オープン

2026/04/04 00:00(公開)
運営する大石さん=豊橋市向草間町で
運営する大石さん=豊橋市向草間町で

 豊橋市向草間町に3日、民話や怪談、お化けをテーマとした私設図書館「夜に歩けど」がオープンした。運営するのは、地域に伝わる怪談や歴史を調査し「豊橋心霊散歩」の名称でブログ活動を続けてきた大石秀斗さんだ。

 

 静岡県出身の大石さんは、愛知工業大学を卒業後、同市大岩町の「本多電子」で医療用超音波診断装置の製造に長年携わってきた。しかし、地域の怪異と民話を後世に伝え残したいという強い思いから退職し、図書館設立に踏み出した。名称は、いろは歌の一節「色は匂へど散りぬるを」に由来しており、「夜にさまよう幽霊の記録を残したい」との願いが込められている。

 

 「怪異」との出合いは中学生時代、地元書店で手にした「百物語 実録怪談集」(角川春樹事務所、2002年)がきっかけだった。それまでは怪談を自分とは無関係な遠い世界の出来事だと思っていたが、同書に収められていたのは、誰もいないはずの場所から声を掛けられたり、古いアパートで夜な夜な足音が続いたりした体験など、日常の延長線上にある物語だった。生活空間に潜む違和感に触れ、怖さよりも興味が勝ったという。 2014年頃からブログで約600件の記事を執筆してきた。地域の記憶が急速に失われている現状に強い危機感を抱いている。語り継がれてきた民話や怪談は、語り手の高齢化や地域の祭りの衰退、新型コロナウイルス禍などの影響で、消失の危機にある。二川地区内の塚のように、かつてはたたりを恐れられた場所が、現在は由来を知る人もなく放置されている状況を目の当たりにしてきた。「記録に残らない話ほど消えるのが早い。今、形に残さなければ地域の物語は永遠に失われてしまう」と話す。 

 

 蔵書は、郷土誌や伝説から、心霊写真、事件記録まで2000冊以上。公立図書館にも所蔵が少ない資料も多い。館内はお化けをテーマにした暗めの空間と明るい空間に分けられ、貴重書を除き貸し出しにも対応している。椅子に座って本を読むこともできる。ウェブ上で検索や貸出状態の確認も可能だ。

 

 開館初日は、怪談本を手にページをめくる人もいれば、大石さんを囲んで体験談や地域の昔話に花を咲かせる来館者の姿もあり、穏やかな団らんの声が響いた。「好きな人には宝の山のような場所なので、ぜひ一度足を運んでほしい。子どもたちもお化けを入り口に地域の歴史や話に興味を持ってもらえたらうれしい」と呼び掛けている。

 

 営業は午前9時から午後5時まで。火曜、水曜定休。

落ち着いた館内
落ち着いた館内
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北川壱暉

 1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。

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