節水対策、過去最長の243日間 豊川用水の渇水

2026/08/15 00:00(公開)
(水資源機構の資料から)
(水資源機構の資料から)

水資源機構まとめ、一丸の協力体制で克服

 

 水資源機構は、豊川用水で2025年夏以降に生じた深刻な渇水と、その対応などをまとめた。同年8月29日に始まった一連の節水対策は、今年4月28日に全面解除されるまで、過去最長となる243日間に及んだ。

 

 東三河や湖西市などの豊川用水の受益エリアは、もともと水源となる河川が乏しく、ダムなどの供給体制に深く依存している。昨夏からの雨不足により、主要水源である宇連ダムと大島ダムが枯渇の危機に直面した。これを受けて水資源機構豊川用水総合管理所は、行政機関や利水者らとともに「豊川用水節水対策協議会」を11回、「豊川緊急渇水調整協議会」を2回にわたり開催し、段階的な節水強化を重ねた。最終段階となる第7回節水対策では、農業用水50%、水道用水30%、工業用水50%という極めて厳しい節水率が設定されたが、こうした多大な協力により、期間中に約1800万立方㍍もの用水が削減された。これは大島ダムの容量の約1・6個分に相当する削減量だ。

 

 これほど長期間に及ぶ危機を乗り切るため、従来のルールを超えた異例の緊急水源確保策が次々と展開された。宇連ダムでは、1968年の運用開始以来初めてとなる「最低水位以下」の貯留水を仮設ポンプで汲み上げて放流するダム底水の活用が実施され、大島ダムでも最低水位以下の貯留水80万立方㍍が有効活用された。また、下流の三上橋地点(豊川市)に揚水ポンプを設置し、豊川下流に流れる既得水利の残水を牟呂松原幹線水路へポンプアップしたうえで、県企業庁の森岡導水路を用いて東部幹線水路へと送水する24時間体制の利水者間融通が稼働した。さらに、牟呂松原頭首工などの通常取水制限流量を5・0立方㍍毎秒から2・0立方㍍毎秒へと一時的に緩和し、寒狭川堰(せき)の貯留水6万4000立方㍍も流況改善のために充当された。これらの緊急対策により、約278万立方㍍の貴重な水源が新たに確保された。

 

 それでもなお地域内の水源が限界に近づいた今年3月下旬には、中部地方整備局の仲介のもと、愛知県と静岡県、水資源機構による異例の三者会談が行われ、他水系からの超広域的な緊急水融通が決定された。天竜川水系自体も取水制限を実施する厳しい状況下に置かれていたが、豊川水系側が最大限の節水とダム底水活用を徹底することを前提に、既存の協定には定めがない超法規的な措置として「佐久間導水」による緊急水融通が合意され、最大4・2立方㍍毎秒、総量850万立方㍍の水が愛知県側へと緊急送水された。同時に、矢作川水系からも幸田蒲郡線を経由して緊急の水融通が行われた。

 

 この未曾有の危機に対し、地域社会全体が痛みを分かち合う苦闘を強いられた。水道用水は、豊橋市をはじめとする関係5市が連携し、午後11時から午前5時までの間の水道水使用を控える「夜間、水道ノータッチ運動」を大々的に展開したほか、公園の噴水停止や公共トイレの一部閉鎖、市営入浴施設の休館などを講じた。市民の日常生活でも、学校給食の牛乳を瓶から紙パックに変更し、ガソリンスタンドでの洗車を自粛する動きが広がった。農業分野では、冬の特産品であるキャベツの作付時期を雨を待ちながら見合わせ、水田の畦畔を補修して漏水を防ぐ工夫がなされた。工業分野では、各受水事業者が地下水の代替利用や生産調整、操業時間短縮に踏み切るなど、一丸となった協力体制が渇水克服への大きな力となった。

 

 報告は全24㌻。水資源機構のサイトで読める。

静岡県、愛知県、中部地方整備局による三者会談=静岡県庁で(3月27日)
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山田一晶

1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。

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