通信制のＮＨＫ学園高校を今春、７４歳の榊原美奈子さん＝豊橋市一色町＝が卒業した。家庭の事情で高校に進学できなかった榊原さんが、半世紀越しの高校生活を送り卒業、「孫のような同級生と一緒に過ごすことができ、楽しい３年間でした」と振り返る。
　榊原さんは子どものころに両親を亡くし、妹２人の生活を支えるために中学卒業後、すぐに就職して高校進学をあきらめた。その後、仕事、子育てと忙しい日々が続き、余裕ができたのが６０代に入ってから。趣味の書道に打ち込む中で、ずっと高校に行きたいと思っており、７０代に入り最後のチャンスと高校進学を決めた。
　同校は通信制でレポートを年間６０枚以上提出し、月に２回、協力校の桜丘高校へ通った。ＮＨＫテレビやラジオの高校講座も見たり、聞いたりした。運動会や遠足もあり、同級生たちと楽しい高校生活を送った。
　一番大変だったのは年２回のテスト。「この年になると覚えるのが大変でねぇ。例えばパレスチナ問題の遠因になったといわれる『バルフォア宣言』など、なじみのないことを覚えるのは苦労しました。１カ月前から準備しましたよ」と振り返る。それでも成績は半分以上で５を獲得、優秀な生徒だった。
　楽しかったのは孫のような世代の同級生との触れ合い。「話をすると、若者たちの考えも分かり、とても楽しかった。先生たちの情熱あふれる指導も私を刺激してくれた」と話し、「思い切って入学して良かった」と笑顔で語る。
　今後は「趣味の書道に全力で取り組み、第２の人生をさらに充実させます」と意気込んでいる。（竹下貴信）