さよなら故郷 設楽ダムに沈む集落

2017/04/14 00:00(公開)
八橋のウバヒガンザクラを観賞する人たち。左後方が知床山=設楽町八橋で
八橋のウバヒガンザクラ満開

 設楽ダム建設で、全住民が移転した設楽町八橋の町指定天然記念物「八橋のウバヒガンザクラ」が見頃を迎えた。町営公園として整備される方針だが、すでに多くの人が訪れ、憩いの場としての姿を見せている。耳をすませば、桜の木の喜びの声が聞こえてくる―。

 お待たせしたのん。設楽も暖かくなって、ようやくきれいな姿を見せることができたよ。平日でもご夫婦やカメラマンさんたちが見に来てくれとるに。
 長野県生まれの私は樹齢100年以上。昔、苗木の頃に地元の遠山廣吉さんが買ってくれて、八橋にやって来ただよ。明治の終わり、当時八橋尋常小学校があったこの高台に移されたじゃんね。
 立派な石垣の上に植えてくれた、ここからの眺めは最高だに。八橋の街並みを眼下に、遠方には富士山のようなシルエットの知床山(ちしょうやま)。八橋の暮らしを見守ってきたけど、毎年春には多くの住民が私を見上げてくれとった。
 10年後をめどにダムが作られ、八橋はダム湖に沈むと言っとった。でもここはダム湖の水面から高い位置にあり、公園になるみたいだのん。住民は一人もいなくなったけど、寂しくはないに。八橋小学校と交流のあった学校からくれた木製ベンチや簡易トイレもある。だもんで、いつでも来ておくれん。
 知床山のふもとに住んでいた人が、春になれば山の一角が八橋の「八」という形になるように桜を植えまいかなんて話もしていたみたいだのん。町はなくなっても、山を望む景色は変わらん。みんな、いっぺんおいでんね。
(由本裕貴)
続きを読む

購読残数: / 本

この記事は登録会員限定です
この記事は有料購読者限定記事です。
別途お申し込みをお勧めします。
最新記事

日付で探す

住まいLOVE不動産 さわらび会 蒲郡信用金庫 藤城建設 光生会 虹の森 パーソナルカラー診断の名古屋・愛知
158商品のおすすめドッグフードを比較 hadato 肌を知る。キレイが分かる。 全国郷土紙連合 穂の国