病気や事故で髪の毛を失った子どもらへの「ヘアドネーション」のため、豊橋市内の小学5年生が22日、2年間伸ばし続けた髪を切った。大阪市のNPO法人を通じ医療用ウイッグとして役立てる。少年は散髪後にすっきりした表情で「髪の毛で悩む子が、ファッションも楽しめるよう役立ててほしい」と語った。
髪の毛を贈ったのは同市大村町の阿久津然(ぜん)さん(10)。小学3年生だった2022年8月、母清子さん(45)との雑談でヘアドネーションを知った。美容院で散髪しそびれたこともあり、「社会に役に立つなら伸ばしてみよう」と思い立った。
2カ月後には耳にかぶるぐらい伸びた。体育の授業やクラブ活動時は髪を束ね、勉強机に向かうと前髪が垂れてくる。毎日の洗髪が面倒になることもあった。
清子さんが心配した学校生活は、同級生に「いつまで伸ばすの」と聞かれることはあったが、過剰にからかわれることはなかったという。然さんによると、スーパー銭湯や公衆トイレで、女性と見間違えた利用者が慌てていたのが印象的だったと振り返った。
この2年間は清子さんと一緒に髪を伸ばし続けたが、ゴール間近に迫った今年6月に清子さんのがんが発覚。治療のため7月下旬に一足早く髪を切って寄贈した。この2カ月間はウイッグを使う母を見つつ、思いを継いでゴールに至った。
同市前畑町の「ハルナ美容室前畑本店」でこの日は約32㌢をカット。然さんが切った毛髪は、NPO法人「JHD&C(ジャーダック)」へ送った。医療用ウイッグを無償提供している。
ジャーダックへの年間寄贈は10万件超。うち男性は今年4月現在で3・5%だ。美容師の朝倉静江さんは「約10年前に始め、今では3カ月に約1人が髪の毛を贈る。でも男性は初めて」と話す。
然さんは「はさみが入るたびに、どんどん頭が軽くなった。好きなドッジボールもしやすくなるが、また伸ばしてもいいな」と頭をなでた。
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愛知県田原市出身。高校卒業後、大学と社会人(専門紙)時代の10年間を東京都内で過ごす。2001年入社後は経済を振り出しに田原市、豊川市を担当。20年に6年ぶりの職場復帰後、豊橋市政や経済を中心に分野関係なく取材。22年から三遠ネオフェニックスも担当する。静かな図書館や喫茶店(カフェ)で過ごすことを好むが、店内で仕事をして雰囲気をぶち壊して心を痛めることもしばしば。