東栄町の住民有志「東栄をよくする会」が、村上孝治町長のリコール(解職請求)のために集めた署名について、町選挙管理委員会は16日、確定有効署名数は953筆と告示した。必要な「有権者の3分の1」の908筆以上となることが確定した。会はただちに町選管に本請求した。選管が受理したことを告示してから60日以内に解職の是非を問う住民投票が実施されることになった。
本請求後、村上町長は報道陣に対し「今後の態度について、21日以降に機会を設けて報告します。医療センターは計画を変更せずに進める」と話した。
町が新しく建設しようとする医療センターは、人工透析や救急の受け入れなどを廃止したことから、会は医療の充実を求め、町長リコールに向けて4月1日から1カ月、署名活動を実施した。請求代表者7人と受任者62人で計969筆の署名を集め、5月6日に町選管に提出した。選管は最初の審査で13筆を無効と判断し、縦覧後の異議申し立てを受けてさらに3筆を無効とした。
この日午後1時、町総務課職員が役場前の掲示板へ有効署名数に関する告示を貼り出した。閲覧した「東栄をよくする会」の共同代表浅尾大輔さんは「953人分が有効になってほっとしている」と感想を述べた。そして「北設楽郡唯一の入院と人工透析、救急を守ってほしいという1年半にわたる議論が全町民に広がってきた。住民投票は、村上町政2期6年について一人ひとりで考えてもらえれば」と語った。
今回のリコール運動の発端は、人工透析や救急が廃止された医療センターの機能再開を盛り込んだ条例改正案の審議を求めて実施された昨年12月の署名活動だった。977筆が集まったが、今年3月議会で否決された。この署名の縦覧期間の2月、大村秀章知事に対するリコール署名の偽造問題が発覚。村上町長後援会が、東栄町の署名の有効性を疑うようなチラシを配った。村上町長は3月議会で陳謝したが、反発した町民が町長のリコール署名活動を改めて始めた。
東栄をよくする会はこの日午後4時、町選管に本請求した。共同代表の西谷賢治さんは、医療センターが無床診療所として運営する計画があることに対し「この計画に反対する意見も署名数に表れている。町長はしっかりとその声を受け止めてほしい」と語った。
8月中旬までに住民投票
住民投票は遅くとも8月中旬までに実施される。有効投票数の過半数の賛成で村上町長は失職する。
県内では1970年以降、首長に対する解職請求は成立例がない。議会解散の直接請求は2005年に十四山村議会、11年に名古屋市議会で成立した。
一方、町6月定例会はこの日再開し、今年度一般会計に9380万円を追加する補正予算案、町税条例の一部改正案など5議案を可決し、閉会した。
閉会後の全員協議会である議員は「縦覧期間中に誰が見に来たのかを確かめるという監視行為のような不審行動をした人もいると聞いた。何らかの規制やルールづくりをすべきだ」と指摘した。
【安藤聡】
確定有効署名数を掲示板に貼る町職員
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